以前に「バーンアウトが生じやすい個人・組織要因」という記事を書きましたが、職場のバーンアウト問題に対してはどのようにアプローチしていけばのよいのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Consulting Psychology Journal: Practice and Researchに掲載されていた論文を読んでみました。
Maslach, C. (2017). Finding solutions to the problem of burnout. Consulting Psychology Journal: Practice and Research, 69(2), 143.
こちらは2017年のカリフォルニア大学の研究で、バーンアウト研究の第一人者であるChristina Maslach教授がバーンアウト対策に関するレビューを行い、着目すべき6つのポイントを指摘しています。
バーンアウトは「人と仕事のミスマッチ」から生じるとされていますが(Maslach & Leiter, 2017)、具体的にどのような「ミスマッチ」なのかが解説されていて参考になりました。
結論
ではさっそく、6つのポイントについてみていきましょう!1. 仕事の負荷
慢性的に仕事の負荷が多い状態では、リカバリーできる機会がなくなるため、仕事をこなす能力が低下していく一方、持続的に処理できる仕事に調整することで、本来持っているスキルを発揮して、新しいことにもチャレンジしやすくなる
2. 裁量権
裁量権がないと大きなストレスを抱える一方、裁量権があるとより仕事に熱意をもって取り組めるようになる
3. 報酬
報酬が不十分だと仕事の価値を下げたり、自分を無能だと感じやすくなる一方、報酬が一貫していると、仕事の満足度が上がりやすくなる
4. コミュニティ
サポートや信頼に欠け、解決できない対立があると、バーンアウトしやすい一方、人間関係が良好であると、仕事上の不一致を解決したり、熱意をもって仕事に取り組みやすくなる
5. 公平性
職員が公平に扱われていないと、皮肉、怒り、敵意が生じやすくなる
6. 価値観
個人と組織の間で仕事に対する価値観のギャップがあると、自分がしたいこととしなければならないことの間で葛藤が生じる
解釈
6つのポイントをみてきましたが、いかがでしたでしょうか。言われてみれば当たり前だなと感じるかもしれませんが、この論文を読む前にバーンアウト対策のポイントを考えたら、即座にこの6つを挙げるのは難しいと思います。
文献レビューに基づいて、この6つのポイントがわかったことは大きいといえるでしょう。
また、バーンアウトが生じたときに、この6つのポイントのどこがミスマッチとなっているのか評価して、より具体的な対策を立てることができます。
そういう意味で、この論文は実践的な内容となっていたので、とても役に立ちました。
実務面でもこれから活用していきたいです。
参考文献:
Maslach, C., & Leiter, M. P. (2017). Understanding burnout: New models. The handbook of stress and health: A guide to research and practice, 36-56.