肥満はうつ病と関連していることが今までの研究でわかっていますが(Pereira-Miranda et al., 2017)、どのような肥満がうつ病の高リスクとなっているのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Journal of Affective Disordersに掲載されていた論文を読んでみました。
Vittengl, J. R. (2019). Which body shape dimensions and sizes predict depression?. Journal of affective disorders.
こちらは2019年のトルーマン州立大学の論文で、20歳以上の妊娠していないアメリカ人23,739名を対象として、身長・体重・BMIと抑うつ症状との関連について調べています。
身長・体重は専門家によって測定されたものが用いられ、抑うつ症状はPHQ-9という質問紙を用いて評価されました。
この研究の新しいところは、
・今までの先行研究ではBMIが肥満の指標になっていたけど、抑うつ症状に影響を与えるのは体重と身長のどっちなの?
・抑うつ症状と関連がみられるのは、どのくらいの肥満のレベルなの?
という2つを調べたことにあります。
これがわかると、うつ病を防ぐために、どのような肥満に気をつければいいのか理解できて有難いですねぇ。
結論
ではさっそく、どんな結果になったのかというと、
・抑うつ症状と関連がみられたのは、身長ではなく体重だった
・抑うつ症状との関連(効果量 0.20以上)がみられたのは、女性ではBMI 30以上、男性ではBMI 36以上だった
となりました。
解釈
身長ではなく体重が抑うつ症状と関連していたというのは想像しやすいと思いますが、この研究のポイントとしては以下の2つが重要かと思います。
・抑うつ症状と関連するBMIのレベルがわかった
・性別で、肥満と抑うつ症状の関連が異なる
今回の研究結果からは、女性のほうが肥満と抑うつ症状の関連が強く表れています。
論文のグラフをみると、女性ではBMIが標準から増えるごとに抑うつ症状との関連が徐々に強くなっているのですが、男性ではBMIが上位10%の範囲になって初めて抑うつ症状との関連が見られ始めています。
先行研究のメタ分析でも女性の肥満のほうが抑うつ症状と関連しやすいことが報告されており(Pereira-Miranda et al., 2017)、女性の肥満はより注意が必要と思っておいたほうがよさそうです。
参考文献:
Pereira-Miranda, E., Costa, P. R., Queiroz, V. A., Pereira-Santos, M., & Santana, M. L. (2017). Overweight and obesity associated with higher depression prevalence in adults: a systematic review and meta-analysis. Journal of the American College of Nutrition, 36(3), 223-233.