前々から服装と気分は何となく関連がありそうだなぁと思っていたのですが、実際のところはどうなっているのでしょうか。
服装は周りからみてもチェックしやすいポイントであるため、もし気分と関連しているなら、メンタル不調の早期発見にも役立ちそうですね。
色々文献検索してみると、やっぱり服装選びと気分に関連があるようです。
まず参考にしたのが、2015年のアラバマ州立大学の論文です(Barquet & Balam, 2015)。
こちらの論文では、71名の大学生を対象として服装選びにどのような要因が影響を与えるのか調査しました。
その結果、以下のようなことがわかりました。
・服装選びには、気分、性格、着心地の良さ、プレゼンの有無、天気が特に関連している
・この傾向は、男性より女性のほうが強い
なるほど、言われてみれば、確かにそのような感じはします。
男性だと、より機能性や利便性を重視して、ずっと同じ服を着ている人も珍しくないですからね。
私もスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグを見習って、ずっと同じ服を着てみるとどうなるのか試してみたいものです。
ただ、周りから「あの人、ずっと同じ服着てる。ちゃんと洗濯しているのかな?」などという懸念の眼差しに耐えられる勇気もないので、必要最低限の服に絞って、その中から順番を決めてローテーションしています。
ただ、周りから「あの人、ずっと同じ服着てる。ちゃんと洗濯しているのかな?」などという懸念の眼差しに耐えられる勇気もないので、必要最低限の服に絞って、その中から順番を決めてローテーションしています。
さて、服装選びと気分が関連していることがわかったところで、次に気になるのは、「気分が落ち込むとどのような服を選ぶの?」ということであります。
このことについては、2010年の共立女子大学の論文が参考になりました(安藤&遠藤, 2010)。
こちらの論文では、138名の女子大学生を対象として、抑うつ状態と服の色の関係について質問紙を用いて調査しました。
その結果わかったのは、
・気分が落ち込んでいる状態では、暖色系(赤や黄色など)の色を避け、薄い寒色系(青や緑)や無彩色(白、黒、グレー)の服を選びやすくなった
ということです。
確かに、精神科の外来では、暖色系の服を着ている方は少ないです。
たまに、鮮やかなオレンジやピンク色の服・バック・靴などを身につけている方々が外来に来られることもありますが、このような場合は気分が高くなっていることも多いです。
また、この論文を読んで服装の変化に注目していたら、治療に反応して症状が良くなった方が暖色系の服を着るようになったケースもありました。
このような結果がみられた背景には、「自分の気分に合った服を着たい」という欲求があるのでしょう。
暖色系の色は、幸福感やワクワク感などのポジティブな感情を連想させやすいので(NAz & Epps, 2004)、気分が落ち込んでいるときに着ると、「気分が落ち込んでいるのに、どうしてこんな明るい服を着ているんだ!?」といった認知的不協和が起きてしまうのです。
ただ、私のように普段からあまり暖色系を着ない人は気分の変化がわかりにくいところがあります。
服装からメンタル不調を予測するときには、暖色系の服を普段よく着ている人の変化に着目したほうがよさそうですねぇ。
参考文献:
Ando, K., & Endo, Y. (2010). Research on the influence of depressive feelings on clothing norms and on the choice of clothing color. 共立女子大学家政学部紀要, 56, 1-11
Barquet, J., & Balam, E. M. (2015). Clothing Preferences of College Students: What Factors Matter?. Journal of Undergraduate Ethnic Minority Psychology, 1(1), 4.
NAz, K. A. Y. A., & Epps, H. (2004). Relationship between color and emotion: A study of college students. College Student J, 38(3), 396.