2018年10月27日土曜日

マキャベリスト・ナルシストの組織への悪影響を緩和するには自己決定を促していくマネジメントが効果的だというボール州立大学の研究


マキャベリスト、ナルシスト、サイコパスはダークトライアド(悪の3つ組)と表現され、職場への悪影響が報告されていますが(O'Boyle et al., 2012)、何か良いマネジメント方法は存在するのでしょうか。

このことについて調べるために、Journal of Business and Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Webster, B. D., & Smith, M. B. (2018). The Dark Triad and Organizational Citizenship Behaviors: the Moderating Role of High Involvement Management Climate. Journal of Business and Psychology, 1-15.


こちらは2018年のボール州立大学の研究で、97の職場の298名の労働者を対象として、ダークトライアド傾向と組織への貢献の関係について調べています。


ちなみに、ダークトライアドを構成しているマキャベリスト、ナルシスト、サイコパスについて簡単に説明すると、以下のようになります。


マキャベリスト:目的のためには手段を選ばず、他人を操作する

ナルシスト:自己中心的でうぬぼれが強い

サイコパス:共感力や良心がなく、反社会的


どれも友だちにはしたくないタイプですね。

しかし、このようなダークトライアド傾向は潜在的に人口の約10%が持ち合わせていると先行研究で報告されています(Gustafson & Ritzer, 1995; Pethman & Erlandsson, 2002)。

ダークトライアドが世間的に嫌われることは本人たちもわかっているので、表面的な付き合いではなかなかわからないのかもしれません。


したがって、ある程度の規模の大きい職場であれば、嫌でもダークトライアドと働かねばならず、そのマネジメントは重要となってくるわけです。


そして、今回の研究でわかったことは、

・ダークトライアド傾向は組織への貢献と負の相関がある

・しかし、本人の自己決定を促してくマネジメントは、マキャベリスト、ナルシストの組織への貢献の悪影響を緩和した

となりました。


つまり、ダークトライアドは組織への貢献に悪影響はあるのだけれども、自己決定を促していくと、マキャベリスト・ナルシストに関してはその影響が緩和されたということになります。


自己決定を促していくマネジメントとは、単に自分で仕事のやり方を決めるということだけでなく、仕事をしていくうえで必要な最新の情報を与えたり、ボーナスや昇進などの報酬の基準を明確にしたり、成長するために必要な研修を与えたりすることを指します。


これは、裁量権、情報、報酬、知識の4つを労働者に与えることで、本人が主体的に仕事に関わろうとする姿勢を改善し、職場への貢献につながっているというわけです。


以前に、「裁量権を与えて創造性を高めるためには職場でのリソースや自己効力感が必要だ」という記事も書きましたが、ただ裁量権を与えるだけでは「仕事を丸投げされた」と捉えられることも多く、職場の生産性につながりにくいのです。

大事なのは、裁量権を与えたうえで、それを発揮できるような環境を整えていくことになります。

ダークトライアドのマネジメントに直面したときは、参考にしてみてください。


参考文献:
Forsyth, D. R., Banks, G. C., & McDaniel, M. A. (2012). A meta-analysis of the Dark Triad and work behavior: A social exchange perspective. Journal of applied psychology97(3), 557.
Gustafson, S. B., & Ritzer, D. R. (1995). The dark side of normal: A psychopathy‐linked pattern called aberrant self‐promotion. European Journal of Personality9(3), 147-183.
Pethman, T. M., & Erlandsson, S. I. (2002). Aberrant self-promotion or subclinical psychopathy in a Swedish general population. The Psychological Record52(1), 33-50.