2018年11月28日水曜日

サイコパスとリーダーシップの関連についてメタ分析したアラバマ大学の研究


共感力がなく反社会的といわれるサイコパスですが、一方で表面的には魅力的に見えたり、物怖じせず大胆に行動できることが評価されたりもします(Lilienfeld et al., 2015)。


先行研究では、アメリカ大統領は、サイコパス傾向が高いほど政治的手腕に長けていたということも報告されています(Lilienfeld et al., 2012)。

実際のところ、サイコパスとリーダーシップの関係は、どうなっているのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Applied Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Landay, K., Harms, P. D., & Credé, M. (2018). Shall we serve the dark lords? A meta-analytic review of psychopathy and leadership. Journal of Applied Psychology.


こちらは2018年にアラバマ大学が行った研究で、サイコパスとリーダーシップの関連について調査した先行研究をメタ分析して相関係数を求めています。

メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて定量的に評価する手法のことで、複数の文献をまとめることで研究の信頼性が高くなります。

メタ分析では「効果量」という標準化した数値を用いて効果の大きさを評価するのですが、相関の効果量としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。


また、この研究ではリーダーシップを以下の2つに分けてメタ分析しています。

・リーダーのなりやすさ(46の先行研究、対象者32,680名)

・リーダーとしての有効性(42の先行研究、対象者6,838名)


それぞれの効果量がどうなったかというと、

・リーダーのなりやすさ 0.07 (95%CI 0.04 to 0.10)

・リーダーとしての有効性 -0.04 (95%CI -0.09 to -0.001)

でした。


サイコパスは有意にリーダーになりやすいが、その有効性は低い傾向にあることになります。

効果量は小さいものの、あまり好ましくない結果ですね。


この研究ではさらに男女別のメタ分析も行っています。

リーダーのなりやすさ

・男性 0.10 (95%CI 0.01 to 0.19)
・女性 0.04 (95%CI -0.04 to 0.12)


リーダーの有効性

・男性 0.03 (95%CI -0.01 to 0.07)
・女性 -0.18 (95%CI -0.29 to -0.07)


男性ではサイコパスは有意にリーダーなりやすいですが、その有効性についてははっきりしていません。

一方、女性ではサイコパスがリーダーになりやすいことははっきりしませんが、その有効性については有意に低くなる傾向がみられています。

男女別でみると、対照的な結果となっていますね。

女性のサイコパスはリーダーとして分が悪いようです。


また、この研究ではどの程度のサイコパスがリーダーとして有効なのかという解析も行っているのですが、結果としては、

・中等度レベルのサイコパスが最もリーダーとしての有効性が高い

となりました。


サイコパスレベルが低いと大胆な行動力がなくなってしまいますし、サイコパスレベルが高いと反社会的な行動が増えて統率力がなくなってしまうのでしょう。

実際に、社会的に成功するサイコパスは、大胆さがあり、衝動性が低いことが先行研究で報告されています(Lilienfeld et al., 2015)。

サイコパスの良い面が強調され、悪い面が目立たなくなれば、かなり魅力的な人物にみられるのでしょう。


自分の身の回りで考えてみると、社会的に成功しているサイコパス傾向の高い方々は、周囲の人々にうまくサポートしてもらっている印象があります。

サイコパスは物怖じしない大胆な行動からリーダーになりやすい反面、反社会的な行動からリーダーとしての有効性が低くなりやすいため、周囲からその衝動性をケアしてもらえるかどうかが重要になるのかもしれません。

よろしければ、ご参考にしてください。


参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Lilienfeld, S. O., Waldman, I. D., Landfield, K., Watts, A. L., Rubenzer, S., & Faschingbauer, T. R. (2012). Fearless dominance and the US presidency: implications of psychopathic personality traits for successful and unsuccessful political leadership. Journal of personality and social psychology103(3), 489.
Lilienfeld, S. O., Watts, A. L., & Smith, S. F. (2015). Successful psychopathy: A scientific status report. Current Directions in Psychological Science24(4), 298-303.