2019年1月23日水曜日

メイヨークリニックの研究で明らかになった、バーンアウトが生じやすい診療科


医師のバーンアウトは医療の質にも影響を与える重大な問題であり、実態の把握が求められていますが(Rotenstein et al., 2018)、バーンアウトが生じやすい診療科はどのようなところなのでしょうか。


文献


このことについて調べるために、JAMAに掲載されていた論文を読んでみました。

Dyrbye, L. N., Burke, S. E., Hardeman, R. R., Herrin, J., Wittlin, N. M., Yeazel, M., ... & Satele, D. V. (2018). Association of clinical specialty with symptoms of burnout and career choice regret among US resident physicians. JAMA320(11), 1114-1130.


こちらは2018年のメイヨークリニックの論文で、アメリカの卒後2年目の研修医4,696名を対象として質問紙調査を行い、診療科とバーンアウト・職業選択の後悔の関係について解析しています。


ちなみに、日本の研修医2年目では様々な科をローテーションするのが一般的ですが、アメリカの研修医2年目では各科の専門プログラムに進むようです。


つまり、この研究では、専門の診療科に進んだ1年目のバーンアウト・職業選択の後悔について調べているということになります。


さらに補足すると、ここでの職業選択の後悔とは、専門の診療科を選んだ後悔ではなく、医師という職業を選んだことへの後悔を指しているので注意してください。



バーンアウトの実態


ではまず、結果の概要についてみていきましょう。

・有効回答率は76.4% (3,588名)

・バーンアウトの症状がみられたのは、45.2% (1,625/3,574)

・職業選択を後悔していたのは14.1% (502/3,571)



医師の労働環境が過酷なのはわかっていましたが、1割以上の人が職業選択を後悔しているとは意外でした。


一般的に、医師はなりたい職業の上位に入る職種ですが、職業選択の際にはあらかじめ、その労働環境について調べておいたほうがよさそうですね。



バーンアウトの詳細


それでは、診療科別の結果をみていきましょう。


ここでは、一般内科を参照点として、それぞれの診療科の相対リスクを求めています。


バーンアウトが生じやすい診療科

・神経内科 1.48 (95%CI 1.18 to 1.79)

・泌尿器科 1.45 (95%CI 1.11 to 1.79)

・救急診療科 1.34 (95%CI 1.18 to 1.50)

・一般外科 1.24 (95%CI 1.02 to 1.45)


バーンアウトが生じにくい診療科

・皮膚科 0.62 (95%CI 0.37 to 0.87)

・病理 0.63 (95%CI 0.34 to 0.93)


最もバーンアウトしやすい診療科が神経内科とは意外でした。


泌尿器科、救急診療科、一般外科では仕事量が特に多いことが要因としてありそうですが、神経内科の場合はその他の要因も関係していそうに思います。


研修医時代に神経内科をローテーションしていたときのことを思い出してみると、神経内科はいわゆる難病が多く、現代の医学ではなかなか根本的な治療ができない病気が多かったように思います。


そういう意味で、努力が報われず、バーンアウトにつながりやすいのかもしれません。




職業選択の後悔



続いて、職業選択の後悔についてみていきましょう。


職業選択で後悔しやすい診療科

・病理 2.60 (95%CI 1.30 to 3.89)

・麻酔科 1.66 (95%CI 1.19 to 2.13)


職業選択で後悔しにくい診療科

・形成外科 0.35 (95%CI -0.30 to 0.99)

・家庭医学 0.69 (95%CI 0.40 to 0.99)



ポイントになりそうなのは、人間関係と仕事の達成感でしょうか。


病理や麻酔科では、他の科と比べて、患者さんとの人間関係を築きにくいため、自分の仕事の達成感を抱きにくいのかもしれません。


逆に、形成外科や家庭医学では、自分の手技や患者さんとの密接な人間関係から、うまくいった仕事に関して達成感を抱きやすいのではないかと考えられます。



考察


バーンアウトへの対策ですが、以前に「バーンアウトが生じやすい個人・職場要因」という記事で書いたように、年齢と労働時間がリスクファクターになっています。


年齢の部分はどうしようもないですが、労働時間の管理はしっかり行っていきたいところです。


仕事量の多い現場ではありますが、仕事の合間に休憩時間をもうけるといった対策でも疲労回復に効果があることが先行研究で示されているため(Zhu et al., 2018)、職場の状況に応じて取り入れやすいものから試していってもらいたいです。



参考文献:
Rotenstein, L. S., Torre, M., Ramos, M. A., Rosales, R. C., Guille, C., Sen, S., & Mata, D. A. (2018). Prevalence of burnout among physicians: A systematic review. JAMA320(11), 1131-1150.
Zhu, Z., Kuykendall, L., & Zhang, X. (2018). The impact of within‐day work breaks on daily recovery processes: An event‐based pre‐/post‐experience sampling study. Journal of Occupational and Organizational Psychology.