有給休暇では仕事のストレスから離れることができるため、メンタルの改善につながりそうですが、果たして抗うつ効果は存在するのでしょうか。
このことについて調べるために、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていた論文を読んでみました。
Kim, D. (2018). Does paid vacation leave protect against depression among working Americans? A national longitudinal fixed effects analysis. Scandinavian journal of work, environment & health.
こちらは2018年のノース・イースタン大学の研究で、3,380名を対象として、40歳時の有給休暇の日数が50歳時の抑うつ気分に与える影響についてオッズ比を求めています。
どのような結果になったかというと、
・女性では、有給休暇が年間10日増えるごとに、抑うつ気分のオッズ比は0.71 (95%CI 0.55 to 0.92)
・特に、白人女性ではオッズ比 0.64 (95%CI 0.43 to 0.94)、子供が2人以上いる女性ではオッズ比 0.62 (95%CI 0.44 to 0.89)
・ただし、男性ではこのような関連はみられなかった
となりました。
つまり、有給休暇で抗うつ効果がみられたのは女性だけで、特に白人、子供が2人以上いると、効果が高いということになります。
アジア人男性で子供のいない私にとっては残念な結果ですが、性別で有給休暇の抗うつ効果が変わってくるのは面白いですよね。
論文著者によると、「女性は仕事以外でも家事や育児の負担が大きいため、有給休暇による恩恵を受けやすいのではないか」と指摘しています。
確かに、子供が2人以上いる場合に有給休暇の抗うつ効果が高くなっていることを考えると、一理あるなという感じがします。
実生活でも男性より女性のほうが休暇を楽しみにしている印象が強いので、感覚的には納得しやすい結果でした。
ただ、今回の研究を通じて、一般的にメンタルに効果がありそうな活動でも、それぞれの属性によって、その効果も大きく変わってくる可能性があるということに気づきました。
産業医面談などで個々のケースに合わせた助言ができるように、さらに知識を深めていきたいです。