先日、「リーダーシップは仕事にどのような影響を与えるのか」といった記事を書きましたが、リーダーシップには様々なタイプがあり、実際にチーム内ではどのようなリーダーシップが機能するのでしょうか。
このことについて調べるために、The Leadership Quarterlyに掲載されていた論文を読んでみました。
Burke, C. S., Stagl, K. C., Klein, C., Goodwin, G. F., Salas, E., & Halpin, S. M. (2006). What type of leadership behaviors are functional in teams? A meta-analysis. The leadership quarterly, 17(3), 288-307.
こちらは2006年のセントラルフロリダ大学の研究で、リーダーシップのタイプとチームパフォーマンス(主観的なチーム効率、チームの生産性、チーム学習)の関係について調査した50の先行研究を対象として、その相関関係についてメタ分析を行っています。
メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて、定量的に評価する手法のことで、複数の研究をまとめた結果なので、研究の信頼性が高くなります。
メタ分析では「効果量」とよばれる標準化した尺度を用いるのですが、相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。
まずは、どのようなリーダーシップのタイプが調査されたのかみてみましょう。
この研究では、「課題重視型」と「人材重視型」の大きく2つに分けて、全部で7つのタイプのリーダーシップについて解析が行われています。
課題重視型
・交換型リーダーシップ(仕事の出来によって褒めたり指導したりすること)
・体制作り(役割の曖昧さや衝突を最小限にすること)
・境界橋渡(コミュニケーションの幅を広げていくこと)
人材重視型
・変革型リーダーシップ(相手の価値観に合わせて知的好奇心を刺激してやる気を高めること)
・配慮型リーダーシップ(意思決定の手続きなどを公平にしていくこと)
・エンパワーメント(裁量権を与えていくこと)
・モチベーション(努力を継続できるように促していくこと)
何か目的を達成するために、課題を行いやすくするアプローチをとるのが課題重視型、人材のポテンシャルを活用していくのが人材重視型となっていますね。
では、課題重視型と人材重視型のそれぞれとチームパフォーマンスの相関関係についてみていきましょう。
課題重視型
・主観的なチーム効率 0.333 (95%CI 0.258 to 0.404)
・チームの生産性 0.203 (95%CI 0.082 to 0.317)
・チーム学習 データなし
人材重視型
・主観的なチーム効率 0.360 (95%CI 0.301 to 0.416)
・チームの生産性 0.284 (95%CI 0.233 to 0.332)
・チーム学習 0.560 (95%CI 0.338 to 0.723)
人材重視型のリーダーシップのほうがやや成績がよいですね。
それでは、リーダーシップのタイプごとにさらに細かくして一気にみていきましょう。
主観的なチーム効率
・交換型リーダーシップ 0.256 (95%CI -0.019 to 0.494)
・体制づくり 0.312 (95%CI 0.225 to 0.393)
・境界橋渡 0.488 (95%CI 0.365 to 0.594)
・変革型リーダーシップ 0.336 (95%CI 0.279 to 0.391)
・配慮型リーダーシップ 0.252 (95%CI 0.082 to 0.408)
・エンパワーメント 0.465 (95%CI 0.368 to 0.551)
・モチベーション データなし
チームの生産性
・交換型リーダーシップ データなし
・体制づくり 0.203 (95%CI 0.082 to 0.408)
・境界橋渡 データなし
・変革型リーダーシップ 0.252 (95%CI 0.146 to 0.353)
・配慮型リーダーシップ 0.222 (95%CI 0.052 to 0.380)
・エンパワーメント 0.315 (95%CI 0.226 to 0.398)
・モチベーション 0.293 (95%CI 0.186 to 0.393)
チーム学習
・エンパワーメント 0.560 (95%CI 0.338 to 0.723)
・その他 データなし
全体的にみると、交換型リーダーシップはチームパフォーマンスとの関連がはっきりしない一方、エンパワーメントは他のリーダーシップと比べてチームパフォーマンスとの相関が大きいですね。
この結果からは、裁量権を与えていくようなリーダーシップはチームパフォーマンスを高めるうえで重要と言えそうです。
以前に、「仕事の生産性を上げるためには上司への信頼ではなく上司からの信頼が必要」という記事を書きましたが、上司が自ら引っ張っていくチームよりも、部下が裁量権を発揮して活躍できるチームのほうが生産性は高くなります。
誰かに指示されてやるよりも、自分で考えて行動したほうがやる気も出て仕事を継続しやすいことを考えると当然ですね。
ただ、気をつけたいのは、裁量権を与えたつもりでも、実際には「仕事を丸投げされた」と思われることです。
裁量権を与えてパフォーマンスを発揮できるのは、職場のリソースや自己効力感があるときだということも指摘されており(Zhang et al., 2018)、本人のポテンシャルを引き出すためにはしっかりとしたサポート体制も必要となってきます。
本人が「自分の実力を発揮できる」と思えるような環境を作っていくことが重要と考えられます。
よろしければ、参考にしてください。
参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Zhang, S., Ke, X., Frank Wang, X. H., & Liu, J. (2018). Empowering leadership and employee creativity: A dual‐mechanism perspective. Journal of Occupational and Organizational Psychology.