コロナ感染がアジアでなぜ少ないのか?
その理由ははっきりしていない。
今までマスク着用の徹底やT細胞反応などが考えられてきたが、今回新たに出てきた研究では風邪を引き起こすライノウイルスがコロナ感染を防ぐという。
参考になるのは、2021年のグラスゴー大学の研究である(Dee et al., 2021)。
こちらの研究では、人工培養した気管支上皮細胞に、新型コロナウイルス単独、ヒトライノウイルス単独、新型コロナウイルス・ヒトライノウイルス両方という3パターンで感染させた場合の経時的なウイルス価を測定している。
つまり、コロナとライノウイルスを同時感染させたら、コロナ感染はどうなるのかということについて調べたというわけだ。
なぜこのような研究をしようと思ったかというと、
・異なるウイルスに同時感染したときはその感染様式が変わる
・ヒトライノウイルスはインフルエンザA型に抑制的に作用し、強いインターフェロン反応(免疫反応の一種)を引き起こす
・新型コロナウイルスはインターフェロン反応に感受性がある
ということが今までの研究でわかっているらしい。
確かにここまでわかっていれば、「ライノウイルスってコロナに効くんじゃね?」と思いたくなるのもうなづける。
では、この研究の結果についてみていこう。
主な結果としては以下のようになった。
・新型コロナウイルスがヒトライノウイルスと同時感染すると、ウイルス価が著明に低下
・ヒトライノウイルスに感染するとインターフェロン反応がみられたが、インターフェロン反応を阻害する物質を投与すると、コロナのウイルス価が上昇
・数学シミュレーションを行うと、人口規模でライノウイルスがコロナに影響を与えている可能性がある
やはり、この研究の仮説の通り、ライノウイルスはインターフェロン反応を介してコロナの感染を防ぐ働きがあるようである。
ライノウイルスは風邪を引き起こすウイルスとして一般的なので、人口規模で影響を与えていることも考えられている。
ただし、気になる点もある。
・この研究は実験室で行われたものであり、生体内の研究ではない
・インターフェロン反応がどのくらいの期間持続するのか不明
・インターフェロン反応がどのようにコロナ感染を防ぐのか不明
今後ライノウイルスによるコロナ感染予防や治療を考えるためには、少なくともこのような点を明確にしていく必要があるだろう。
興味深い研究ではあるだけに、これからの展開が気になるところである。