コロナ禍でテレワークを強いられている方々は少なくないだろう。
テレワークには様々なメリットがある反面、周囲の人間関係から切り離されて孤独感が生じやすいのではないかということが懸念される。
実際に私の産業医先でも、テレワークになってからメンタル不調を来してお休みされる方々が出てきたり、総務から孤独感に関するレクチャーをしてほしいといった依頼が来たりしている。
この問題への対処の方向性を示すことは喫緊の課題と言ってもいいだろう。
そこで、孤独感の健康への影響や対策について調べてみることにした。
参考になったのは、2010年のシカゴ大学の研究である(Hawkley & Cacioppo, 2010)。
こちらの研究では、今までの孤独感に関する先行研究をまとめてレビューしてくれている。
ここでわかった孤独感の健康面への影響は以下の通りである。
・血管への抵抗が高まって、高血圧や心臓病になりやすい
・死亡率も高まる
・認知機能が低下して、認知症になりやすい
・うつ状態になりやすい
・自制心が低下して、健康的な生活習慣が減りやすい
・睡眠の質が低下して、日中に疲労を感じやすい
・免疫が低下して、感染症にかかりやすい
まとめてみると、孤独感が心身の健康に与える影響はかなり大きいことがわかる。
論文を読んでみると、人類は長い歴史を通して集団の中で暮らしてきた生き物なので、社会的に孤立した環境に置かれると脅威を感じやすくなることが主な要因となっているようである。
確かに、一人で暮らしていると「自分は何のために生きているのか」など実存的な問題で悩みやすくなる傾向があることは普段の産業医面談でも感じるところである。
では、このような孤独感の問題にはどのように対処していけばいいのだろうか。
論文では以下の4つが指摘されている。
①社会的スキルを高める
②社会的サポートを提供する
③社会的相互交流の機会を増やす
④社会的に不適応を起こしやすい考え方を修正する
①と④は専門家の力が必要となりそうだが、②と③は比較的に職場でも対応できるのではないだろうか。
孤独感の強い方々に対しては上司のサポートや同僚とのコミュニケーションの機会を増やすために、仕事の調整などの相談の場を設けたり、オンラインでランチ会などを企画してみたりするのは良い方策だと思う。
私の産業医先ではオンラインの体操プログラムを同僚と一緒に参加することで、運動だけでなく社員同士の交流の場となって好評だったという。いいアイディアだったと思う。
運動自体もテレワークより過酷な閉鎖環境で気分改善効果があることが今までの研究でわかっており(Schneider et al., 2010; Abeln et al., 2015)、相互交流とダブルの効果で孤独感に効果があることが期待される。
そう考えてみると、オンラインの運動プログラムなどを通してコミュニティに入ることができると孤独感への対処としては有効な手段となりそうである。
ご参考になれば、ぜひ活用してみていただきたい。