2018年4月12日木曜日

段階的復職は休職期間を減らし、収入を上げ、失業もしにくくなるというドイツのリューベック大学の研究


長期休職した場合、いきなりフルタイムの仕事に戻るのは体力的にも精神的にも負荷が大きいので、段階的に職場に復帰していくことが重要ですが、実際に段階的復職にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

そのあたりについて気になったので、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていました論文を読んでみました。


こちらは2016年にドイツのリューベック大学で行われた研究で、縦断的な行政データを用いて解析が行われています。

段階的復職者は18-60歳で、2007年1-6月に整形外科、循環器、腫瘍、精神科のリハビリテーションに参加した方々から選ばれました。

段階的復職の効果を調べるために、障害者年金取得率、正規の収入、休職手当の期間、2009年末までの失業率が用いられ、同様の疾患で段階的復職をせずに復帰した方々と比較されています。

解析対象者は、段階的復職者1,875名に対し、属性を合わせた非段階的復職者1,875名となりました。

その結果、段階的復職者は
・障害者年金取得率が40%低下
・2007-2009年の3年間の収入は12,920ユーロ高い
・休職手当の期間や失業率は有意に低い
となりました。


というわけで、今回調査された項目では段階的復職の全勝ですね。

診療科ごとのデータでないところが残念ですが、段階的復職を行ったほうが結果的に休職期間は短くなり、収入は増え、失業しにくいといえます。



これは休職されている方と職場の双方にメリットがあります。

早く職場復帰したいと焦っている方は段階的に復職を行うことで長期的に安定して働きやすくなって収入も上がりやすくなりますし、職場は職員の休職期間が短くなることで生産性を改善することができるのです。


実務的にみると、段階的復職は休職されている方と職場の安心感にもつながります。

今まで長期間休職されていた方は、体調が改善しても、実際にこれから復帰できるだろうかと不安に思っている場合が多いです。

そのようなときに段階的復職を行うと、少しずつ試しながら自分のできることを増やしていけるので、体調悪化のリスクを抑えて仕事への適応を目指していくことができます。

一方、職場にとっても、今まで休職されていた方を今後どのようにマネジメントしていけばよいのかという不安があります。

そのようなときに段階的復職があると、どのような仕事ができて、どのような仕事が苦手なのかがわかり、その職員の状態や傾向も把握しやすくなるため、フルタイムで働けるようになった後のマネジメントも行いやすくなります。


まだ段階的復職制度を導入されていない事業場におきましては、ぜひ段階的復職の活用についてご検討していただきたいです。