2018年4月15日日曜日

アジアでは長時間労働によって抑うつ症状が出現しやすいというフィンランドの研究


長時間労働が心身のストレス反応に影響を与えることは今までの数々の研究でわかっており、残業時間を減らす取り組みをしている事業場も多いですが、世界のなかで長時間労働が抑うつ症状と結びやすい地域はあるのでしょうか。

そのあたりについて気になったので、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていたメタ分析を読んでみました。


こちらはフィンランドの研究で、10の出版されたコホート研究と18の未出版の個人データが用いてメタ分析が行われています。コホート研究の多くは、週55時間以上の労働を長時間労働と定義されていました。

解析対象は35カ国189,729名で、1-5年のフォローアップ期間に21,747名が新たに抑うつ症状を呈しました。


長時間労働していると抑うつ症状が出現するオッズ比は、

・全体で1.14 (95% CI 1.03-1.25)

となりました。


気になる地域別のオッズ比は、

・アジアで1.50 (95% CI 1.13-2.01)
・ヨーロッパで1.11 (95% CI 1.00-1.22)
・北米で0.97 (95% CI 0.70-1.34)
・オーストラリアで0.95 (95% CI 0.70-1.29)

という結果になりました。


アジアでの関連が強く、ヨーロッパでは弱い関連 がみられますが、その他では関連がみられなかったんですね。

同じ時間働いても、仕事のやりがいや周りのサポートなどのストレス緩和要因によってストレス反応は変わってくるので、そのあたりが効いているのでしょうか。

残業が一般的でない地域で長時間労働している場合は本人の意欲や熱意によって主体的に働いている可能性が高くなると考えられるため、心理的な負担は少ないのかもしれません。

いずれにしても、アジアでの長時間労働は抑うつ症状との関連が強いので、メンタル不調のリスクファクターであると捉えておいたほうがよさそうです。