2018年4月5日木曜日

メンタル不調による長期休職は同僚の仕事のストレスを増やすという大阪市立大学の研究


メンタル不調で仕事をお休みする場合、職場では普段より少ない人数で仕事をカバーしなければならず、職場の同僚により大きな負荷がかかってくることになりますが、同僚のメンタルにどのような影響があるのでしょうか。

そこで、Industrial Healthに掲載されていた、メンタル不調による長期休職が職場の同僚に与える影響に関する論文を読んでみました。

Fukuda, Y., Iwasaki, S., Deguchi, Y., Ogawa, K., Nitta, T., & Inoue, K. (2018). The effect of long-term sickness absence on coworkers in the same work unit. Industrial health56(1), 2-9.

こちらは大阪市立大学が16,032名の公務員を対象とした後ろ向きコホート研究です。

職業性ストレス簡易調査票 (BJSQ)を用いて、仕事のストレス、心身のストレス反応、ソーシャルサポートを測定し、職場でメンタル不調による長期休職者が出た群と出なかった群で差があるかどうか調べるために共分散分析を行っています。


結果としては、
・メンタル不調による長期休職者が出た群では有意に仕事のストレスや心身のストレス反応が悪化していた
・しかし、ソーシャルサポートに関しては有意な差はみられなかった
となりました。


職場でのマンパワーが減って一人一人の仕事量が増えたことで、仕事のストレスや心身のストレス反応が悪化したのは当然と考えられますが、それによってソーシャルサポートが乏しくなるほどの人間関係の悪化はみられなかったことは着目すべきところです。



ソーシャルサポートのようなストレス緩和因子は、ストレス反応を和らげるだけでなく、仕事量などのストレス増強因子が心身のストレス反応に与える影響を緩和してくれることがわかっています(Karasek et al., 1982)


さらに、別の研究では、仕事の負荷が大きいときに職場のリソースがあると、生産性がより高まるということも報告されています(Bakker et al., 2007)


マンパワーが減って大変なときこそ、ソーシャルサポートなどのストレス緩和因子をうまく活用していくことが、同僚のメンタルヘルスのさらなる悪化を防ぐとともに、職場の生産性を改善することにも有効と考えられます。


実際の産業保健の現場でも、困ったときにお互いをサポートし合える職場は、仕事が忙しくても健康を保ち、大きな成果を出していることが多いです。

何か問題に直面したときも周りに助けを求められるという安心感があると、仕事にも積極的に取り組みやすいのでしょう。


ソーシャルサポートを大事にしている組織風土が、メンタル不調の連鎖を防ぐうえで鍵となりそうです。



参考文献:

Karasek RA, Triantis KP, Chaudhry SS. Coworker andsupervisor support as moderators of associations between task characteristicsand mental strain. Journal of Organizational Behavior. 1982;3(2):181-200.
Bakker AB, Hakanen JJ, Demerouti E, Xanthopoulou D. Job resources boost work engagement, particularly when job demands are high. Journal of educational psychology. 2007;99(2):274.