2018年4月28日土曜日

ストレスチェックをただやるだけではストレス低減・パフォーマンス改善効果はないという東京大学の研究


ストレスチェック制度の運用が始まってからしばらく経ちますが、なかなか効果が見えないという声をよく耳にします。実際にどのくらいの効果があるのかは検証が必要だと感じますし、気になるところであります。

そこで、Journal of Occupational Healthに掲載されていた、ストレスチェックの効果に関する論文を読んでみました。

Imamura, K., Asai, Y., Watanabe, K., Tsutsumi, A., Shimazu, A., Inoue, A., ... & Kawakami, N. (2018). Effect of the National Stress Check Program on mental health among workers in Japan: A 1-year retrospective cohort study. Journal of occupational health, 2017-0314.

ちなみに、こちらの学術誌は、日本で一番大きな産業保健に関する学会である産業衛生学会が母体となっており、今回の論文は国内のストレスチェックについて調査されています。


こちらは東京大学の研究で、2,492名の労働者を対象にWeb調査が行われています。

ストレスチェック制度が導入され始めた2015年11月~2016年2月までのベースライン時と比較して、2016年12月のストレス(BJSQ)とパフォーマンス(HPQ)がどのくらい変化したかを一般線形モデルを用いて解析した後ろ向きコホート研究となっています。

調査対象者は、
・ストレスチェックを受けたか
・職場環境改善があったか
で4つにグループ分けされました。

人数としては、
・両方ともなかったグループは1,342名
・ストレスチェックだけ受けたグループは1,009名
・職場環境改善だけあったグループは76名
・両方ともあったグループは65名
となりました。


どんな結果になったかというと、
・ストレス低減が有意に確認されたグループは、ストレスチェックと職場改善が両方ともあったグループだけで、効果量(Cohen's d)は-0.14だった
・パフォーマンスの改善はどのグループでも統計的に有意なものはみられなかった
となりました。


ということで、今回の研究ではストレスチェックはただやるだけではストレス低減やパフォーマンスの改善にはつながらず、職場環境改善を取り入れることでストレス低減の効果がみられています。

ただ、効果量が小さいので、目立った変化はないのかもしれません。なかなか切ないところですが、まだストレスチェック制度導入1年後の状態なので、各職場も試行錯誤の段階だと思います。

職場環境改善の方法を見直したりすることで長期的な影響は変わってくるかもしれません。今後のさらなる研究に注目していきたいです。