2018年11月10日土曜日

バーンアウトが生じやすい個人・職場要因を明らかにした高麗大学校のメタ分析


職場でのバーンアウト(燃え尽き症候群)は生産性の低下につながり、対策が必要な問題でありますが、バーンアウトに陥りやすい要因としてはどのようなものが存在するのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Employment Counselingに掲載されていた論文を読んでみました。

Lim, N., Kim, E. K., Kim, H., Yang, E., & Lee, S. M. (2010). individual and work‐related factors influencing burnout of mental health professionals: a meta‐analysis. Journal of Employment Counseling47(2), 86-96.


こちらは2010年の高麗大学校の研究で、メンタルヘルス従事者のバーンアウトの個人・職場要因に関する15の先行研究(3,613名)をメタ分析して、バーンアウトと個人・職場要因の相関関係を求めています。

メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めて、定量的に評価する研究手法のことで、研究の信頼性は高くなります。

また、定量的に評価する尺度は効果量とよばれ、相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。


今回の研究では、バーンアウトを以下の3つに分類して解析しています。

・感情的疲労(感情の枯渇)

・個性喪失(共感の欠如)

・個人的遂行(仕事での能力)


では、これら3つのバーンアウトと個人・職場要因の相関関係についてみてみましょう。太字の数字は統計的に有意な値となっています。

感情的疲労
・年齢 -0.20
・男性 0.02
・教育レベル 0.11
・仕事の経験 -0.07
・労働時間 0.25
・派遣職員 0.13

個性喪失
・年齢 -0.18
・男性 0.11
・教育レベル 0.00
・仕事の経験 -0.05
・労働時間 0.09
・派遣職員 0.14

個人的遂行
・年齢 0.09
・男性 -0.03
・教育レベル 0.14
・仕事の経験 0.09
・労働時間 0.10
・派遣職員 -0.12


まとめると、

・感情的疲労のリスクファクターは、年齢が若く、教育レベルが高く、労働時間が長く、派遣職員であること

・個性喪失のリスクファクターは、年齢が若く、男性であり、労働時間が長く、派遣職員であること

・個人的遂行ができないリスクファクターは、年齢が若く、教育レベルが低く、仕事の経験が浅いこと

となります。


年齢はどの項目でもリスクファクターとなっており、労働時間や派遣職員であることも2つの項目でリスクファクターになっていますね。


確かに、実務面でみても、バーンアウトは年齢が若くて労働時間が長い人に起きやすいと思います。

特に、新年度などに職場や役職が変わったタイミングで、仕事のペースを飛ばしすぎて調子を崩すパターンが多い印象です。

たまに「ガンガン働いていこうぜ!」という雰囲気を醸し出している方がいらっしゃいますが、そういった人は要注意ですね。


以前に「メンタル不調につながりやすい仕事のストレス」という記事でも触れましたが、自分の努力が見返りに合わないときに人間は大きなストレスを受けます。

そして、仕事で頑張っても、それが成果につながらなかったときは、バーンアウトが生じやすいことが先行研究で報告されています(Unterbrink et al., 2007)。


特に、新しい職場に異動になった当初などは過剰適応期といって頑張りすぎてしまう傾向があり、その後抑うつ期が訪れて調子を崩しやすいところがあります。

あらかじめ、この傾向を理解したうえで、最初から飛ばしすぎないようにすることは重要だと考えられます。

よろしければ、参考にしてみてください。


参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Unterbrink, T., Hack, A., Pfeifer, R., Buhl-Grießhaber, V., Müller, U., Wesche, H., ... & Bauer, J. (2007). Burnout and effort–reward-imbalance in a sample of 949 German teachers. International archives of occupational and environmental health80(5), 433-441.