2018年11月3日土曜日

アジア人への「過大評価」という差別の悪影響は白人に認識されにくいというコロンビア大学の研究


仕事や旅行などで海外に行くと、自分が日本人やアジア人であることを意識する機会が多くなりますが、外国人とコミュニケーションをとるときに、自分がアジア人としてみられていることはどのような影響をもたらすのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Vocational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。

Kim, J. Y. J., Block, C. J., & Nguyen, D. (2018). What's visible is my race, what's invisible is my contribution: Understanding the effects of race and color-blind racial attitudes on the perceived impact of microaggressions toward Asians in the workplace. Journal of Vocational Behavior.


こちらは2018年のコロンビア大学の研究で、1年以上の勤務経験のある大学院生65名(アジア人25名、白人40名)を対象に、職場の差別問題の悪影響についてアンケート調査を行いました。


どのような調査を行ったかというと、それぞれの参加者に以下の4つのタイプの差別のエピソードを読んでもらい、その後の被害者のメンタル悪化を予測してもらいました。

①非難:「うちの建物から出たねずみは、君が中国から連れてきたんだろ?」など

②侮辱:「君は早く昇進できるよ。だって副社長はアジアの女が好きだから」など

③過小評価:「君の名前は発音しづらいから、ジョンとかルークとかに変えたらどうだ?」など

④過大評価:「君たちアジア人は勤勉だから、他の人より負荷が大きくてもきちんとやってくれると信じているよ」など


どれもなかなか腹立つ内容ですね。

うっかりその辺にデスノートが落ちていたら、相手の名前を書き込んでいるのではないでしょうか。


では、結果はどうなったかというと、

・被害者のメンタル悪化の全体的な予測は、アジア人と白人で有意な差はみられず、①非難が最も悪かった

・ただし、アジア人は白人と比べて、①非難と②侮辱、①非難と④過大評価の差が有意に小さかった

となりました。


つまり、アジア人は、白人が思っているよりも、侮辱や過大評価によるメンタル悪化を感じやすいということになります。


今回の研究対象となっているのは社会人経験のある大学院生なので、白人のなかでもある程度教養のある方々だと思いますが、それでも侮辱や過大評価の悪影響には認識の差があるみたいです。


特に、過大評価では、発言者が相手に良かれと思って言っているケースも考えられ、知らないうちに人間関係の溝が生まれやすいかもしれません。


私たちは、「インド人は数学が得意」と思いがちですが、白人からみると、「アジア人は数学が得意」と思われているようです。

日本人からしてみれば、必ずしも当てはまるものではないことはわかりますが、判断材料が少ないと、このようなバイアスが生まれやすいのかもしれません。


海外で働くときには、自分の特性を知ってもらうような働きかけも必要になってくると思っておいたほうがよさそうです。