2018年11月14日水曜日

オランダのフローニンゲン大学の研究で明らかになった復職後の再休職の予測因子


復職後の再休職率は50%ともいわれており(Endo et al., 2013)、職場復帰した後も継続的に働けるかどうかは大きな課題となっていますが、復職後の再休職の予測因子となるものは存在するのでしょうか。


このことについて調べるために、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていた論文を読んでみました。

Arends, I., van der Klink, J. J., Van Rhenen, W., de Boer, M. R., & Bültmann, U. (2014). Predictors of recurrent sickness absence among workers having returned to work after sickness absence due to common mental disorders. Scandinavian journal of work, environment & health, 195-202.


こちらは2014年のフローニンゲン大学の研究で、メンタル不調から復職した158名を対象として、その後1年間までに再休職する予測因子について調べています。


再休職の予測因子としては様々な項目が調査されたのですが、大きく分けると、以下の4つに分類になります。

・基本属性(年齢、性別、教育歴など)

・疾病要因(不安、抑うつ度、精神的苦痛など)

・個人要因(ストレス対処法)

・職場要因(在職期間、雇用形態、企業規模など)


このなかで、統計的に有意な結果が得られたのは、以下の3つの項目となりました。

・1つ以上の慢性疾患を抱えていると再休職しにくい (オッズ比 0.54)

・企業規模が100人以上だと再休職しやすい (オッズ比 2.59)

・上司との衝突があると再休職しやすい (オッズ比 2.21)


上司との衝突が再休職のリスクファクターになるのはわかりますが、慢性疾患があると再休職しにくかったり、企業規模が大きいと再休職しやすかったりするのは意外ですね。


著者が指摘するには、慢性疾患があっても復職できた人は健康問題への対処が上手かったり、企業規模が小さいと人間関係が密接になってサポートが得られやすかったりすることが考えられるそうです。


ウサギとカメのレースでカメが勝ったり、田舎の人が優しかったりするのと同じですかね。


今回の研究では対象者数が小さいので、今後の研究でも同じような結果が出るのか注目していきます。


ただ、これら3つの再休職の予測因子のなかで、実務面で介入できるところとしては、上司との衝突の部分でしょう。


ケースによって、本人側、上司側、その両方が問題となることがありますが、復職時には本人と上司の人間関係については確認していき、必要があれば調整を行っていきたいです。



参考文献:
Endo, M., Haruyama, Y., Muto, T., Yuhara, M., Asada, K., & Kato, R. (2013). Recurrence of sickness absence due to depression after returning to work at a Japanese IT company. Industrial health51(2), 165-171.