2018年11月17日土曜日

ボランティアをしている人は死亡リスクが22%低いというイギリスのエクセター大学の研究


ボランティアは健康によいことが先行研究で報告されており(Von Bonsdorff & Rantanen, 2011)、産業医面談でも休職中の方がリハビリ目的でやられている話を時々聞きますが、ボランティアの健康増進効果はどの程度のものなのでしょうか。



このことについて調べるために、BMC Public Healthに掲載されていた論文を読んでみました。

Jenkinson, C. E., Dickens, A. P., Jones, K., Thompson-Coon, J., Taylor, R. S., Rogers, M., ... & Richards, S. H. (2013). Is volunteering a public health intervention? A systematic review and meta-analysis of the health and survival of volunteers. BMC public health13(1), 773.


こちらは2013年にイギリスのエクセター大学が行った研究で、ボランティアと健康に関する40の先行研究を対象に、系統的レビューとメタ分析を行っています。

関連するテーマの先行研究を定性的にまとめて評価したものが系統的レビュー、定量的に評価したものがメタ分析になります。

どちらも複数の文献をまとめた結果なので、研究の信頼性は高くなります。


そして、この研究では以下のようなことがわかりました。

・ボランティアは、抑うつ気分、人生の満足度、幸福感に効果がみられるが、身体的健康には効果がみられない

・ただし、この結果は参加者を実験的に割り付けた先行研究では定かではない

・ボランティアをしている人たちの死亡リスク比は0.78 (95%CI 0.66 to 0.90)

・どのようなボランティアのタイプ・頻度が効果的かは定かではない


今回の研究結果からは、ボランティアは身体的健康よりも精神的健康に有効であり、自発的に参加したときに効果がみられています。

ボランティアは健康によいからといって無理やり参加させようとしても、効果はあまり期待できないということですね。

ボランティアという言葉の意味から考えると当然かもしれませんが。


また、ボランティアをしている人たちの死亡リスク比が0.78ということは、ボランティアをしていると死亡リスクが22%低いということになります。

これは大きな違いがみられましたね。

これには様々な要因が考えられるかと思いますが、その1つには社会的な人間関係ができることが大きいかと思います。

以前に「人生のなかで人間関係がどのように変化するのか」という記事でもふれましたが、人間関係は運動不足、肥満、喫煙と同じくらい死亡率に影響を与えると報告されており(Holt-Lunstad et al., 2010)、健康に与える影響は大きいのです。


私も数年前から発展途上国の子供たちを支援する団体に寄付しながら、現地の子供たちと手紙や写真のやりとりをしていますが、こうした人間関係の交流が自分の人生の満足度を上げてくれていることを実感しています。


今後の研究でどのようなボランティアのタイプ・頻度が効果的かわかるとよいですが、今回の研究では自発的に参加できるものがよいとわかったので、ボランティアしてみたい方はまずは自分が興味をもったものに参加してみるのがよろしいかと思います。


ご参考になれば、活用してみてください。


参考文献:
Von Bonsdorff, M. B., & Rantanen, T. (2011). Benefits of formal voluntary work among older people. A review. Aging clinical and experimental research23(3), 162-169.