2018年9月12日水曜日

30歳以降は減少傾向!人生のなかで人間関係がどのように変化するのかを明らかにしたマックス・プランク研究所のメタ分析


人間関係は良くも悪くもメンタルヘルスに大きな影響を及ぼす要因となりますが、一般的に人生を通じて、どのように変化していくものなのでしょうか。


このことについて調べるために、Psychological Bulletinに掲載されていた論文を読んでみました。

Wrzus, C., Hänel, M., Wagner, J., & Neyer, F. J. (2013). Social network changes and life events across the life span: a meta-analysis. Psychological bulletin139(1), 53.


こちらは2013年のマックス・プランク研究所のメタ分析で、人生における人間関係の変化について扱った277の先行研究(対象者177,635名)をまとめて定量的に評価しています。


主な評価ポイントとしては、

・年齢によって人間関係はどのように変化するのか

・ライフイベント(結婚、子供の誕生、引越しなど)は人間関係にどのような影響を与えるのか

の2つについて、効果量(Cohen's d)を計算しています。


ちなみに、効果量の目安は、0.3で「小さい」、0.5で「中程度」、0.8で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)


では、結果について一気にみてみましょう。

年齢による変化

・30歳までは、幅広い人間関係(効果量 0.235)、親しい人間関係(効果量 0.250)、友人関係(効果量 0.245)、その他の知り合い関係(効果量 0.370)は有意に増加

・30歳以降では減少傾向がみられ、65歳を過ぎると幅広い人間関係(効果量 -0.354)、親しい人間関係(効果量 -0.337)、友人関係(効果量 -0.193)、その他の知り合い関係(効果量 -0.513)は有意に減少

・ただし、家族関係に有意な変化はみられない


ライフイベントによる変化

・思春期では親しい人間関係は有意に増加(効果量 0.436)

・結婚では人間関係に有意な変化はみられない

・子供が産まれると、親しい人間関係(効果量 -0.442)や家族関係(効果量 -0.501)は有意に減少

・就職すると、同僚との人間関係は有意に増加(効果量 2.998)

・配偶者を失うと、親しい人間関係は有意に減少(効果量 -0.345)

・親類が亡くなると、幅広い人間関係は有意に減少するが(効果量 -0.606)、親しい人間関係は有意に増加(効果量 0.693)

・離婚すると、家族関係は有意に減少(効果量 -0.429)

・引越しすると、友人関係は有意に減少(効果量 -1.263)


いくつか気になるところもありますが、今までの自分の経験や周りの人の話を聞くと、だいたい当てはまっているように思います。

仲が良かった人たちでも、子供が産まれたり、引っ越したりすると、ほとんど会わなくなってしまいますよね。



とはいえ、人間関係が減っていくことはあまりよろしくないことであります。

なぜなら、2010年のユタ大学が行ったメタ分析では、人間関係は運動不足、肥満、喫煙と同じくらい死亡率に影響を与えると報告されているからです(Holt-Lunstad et al., 2010)。

実際の精神科の臨床でも、孤独による不安やストレスを抱えている方は治療を継続していても症状がなかなか良くならないケースが多い印象があります。

人間関係はそれだけ健康に与える影響が大きいのです。


人間関係を増やしたい方は、趣味の活動や習い事、ボランティアなどのコミュニティに参加してみてはいかがでしょうか。

私もサルサというラテンダンスを習っていますが、これによって世間との交流を保つことができ、週末に自宅警備員にならずにすんでいます。

最近はSNSなどでも様々なコミュニティが存在しているので、ネットで探してみて、興味のあるものに参加してみてもよいかもしれません。


参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Holt-Lunstad, J., Smith, T. B., & Layton, J. B. (2010). Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review. PLoS medicine7(7), e1000316.