2018年9月19日水曜日

転職の意向を左右するのは収入の金額ではなく基準が重要だという中国の華南師範大学の研究


転職を考えるうえで、収入面がどうなるのかは気になる要素だと思いますが、実際に収入は転職の意向にどのような影響を与えているのでしょうか。


このことについて調べるために、frontiers in Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Xiong, G., Wang, X. T., & LI, A. (2018). Leave or Stay as a Risky Choice: Effects of Salary Reference Points and Anchors on Turnover Intention. Frontiers in Psychology9, 686.


こちらは2018年の中国の華南師範大学の研究で、フルタイム労働者117名を対象に以下のような質問紙調査を行いました。

翌年の給料が、

・必要最低限以下

・必要最低限以上だが今より低い

・今より高いが目標以下

・目標以上

だった場合、転職したくなる気持ちはそれぞれどのくらい出てきますか。


結果はどうなったかというと、

・「必要最低限以下」「今より高いが目標以下」のときは転職の意向と正の相関がみられた(r = 0.23, p < 0.05)

・「必要最低限以上だが今より低い」「目標以上」のときは転職の意向と負の相関がみられた(r = -0.23, p < 0.05)

となりました。


給料が上がっても目標以下であれば転職の意向が強くなる一方で、給料が下がっても必要最低限以上であれば転職の意向は弱くなっていますね。


さらに、この研究では追加調査が行われており、

・転職の意向は給料の満足度と同僚の給料の影響を受ける

ことが指摘されています。


つまり、実際に給料が上がったか下がったかよりも、自分のなかでの基準に比べて高いか低いかどうかが転職の意向に影響を与えているということになります。

自分の給料が目標や必要最低限と比べてどうだったか、同僚と比べてどうだったかというところで転職の意向を判断しているのです。

これは、テストで95点をとって学年1位だと思って喜んでいたら、98点とっているやつがいて悔しい思いをしたときと同じですね。


今回の研究は1年後の給料を想像して回答してもらっているので、実際にそうなったときに同じ反応を示すかわからないところが研究の限界としてあります。

ただ、組織をマネジメントする場合は、ただ給料を上げたから従業員が満足するだろうとは思わずに、各自の基準によっては転職の意向が強くなる可能性もあることを頭に入れておいたほうがよさそうです。