2018年9月8日土曜日

知識だけでは不十分!メンタル不調者への上司のサポートを増やすには自信が重要だったというニューサウスウェールズ大学の研究


以前に「上司のサポートを増やすには上司をサポートする体制が必要だ」という記事でも書きましたが、上司のサポートを増やすのはそう簡単なことではありません。上司に直接的に働きかけてサポートを増やす方策はあるのでしょうか。


このことについて調べるために、Occupational Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。

Bryan, B. T., Gayed, A., Milligan-Saville, J. S., Madan, I., Calvo, R. A., Glozier, N., & Harvey, S. B. (2018). Managers’ response to mental health issues among their staff. Occupational Medicine.


こちらは2018年のニューサウスウェールズ大学の研究で、85名の消防署で働く管理職の方に以下の項目についてアンケート調査を行いました。

・メンタルヘルスの知識をどのくらいもっているか

・精神疾患への偏見はどのくらいあるか

・管理職としての役割をどのくらい理解しているか

・メンタル不調者とコミュニケーションをとることにどのくらい自信があるか


そして、それぞれに該当する上司が、実際にメンタル不調者と積極的にコミュニケーションをとったかについて、オッズ比を求めてみると、結果は以下のようになりました。


休職していないメンタル不調者

・メンタルヘルスの知識 0.63 (95%CI 0.16-2.58)

・偏見のない態度 0.63 (95%CI 0.16-2.54)

・管理職としての役割の理解度 1.31 (95%CI 0.36-4.73)

・コミュニケーションへの自信 15.79 (95%CI 3.03-82.37)


休職しているメンタル不調者

・メンタルヘルスの知識 0.97 (95%CI 0.24-3.87)

・偏見のない態度 5.22 (95%CI 1.21-22.54)

・管理職としての役割の理解度 2.32 (95%CI 0.61-8.90)

・コミュニケーションへの自信 19.84 (95%CI 2.25-175.15)


休職の有無にかかわらず、自信のある管理職の方は、統計的に有意にメンタル不調者とコミュニケーションをとっていますね。

そして、休職中のメンタル不調者の場合では、偏見のない態度も統計的に有意となっています。

一方で、メンタルヘルスの知識は、どちらの場合でも有意となっていません。


この結果は、今後の管理職研修のあり方を考えさせられます。

なぜなら、上司のサポートを増やすには、ただ知識を提供するだけでは不十分で、上司の態度や自信を改善させるところまで踏み込む必要があるということになるからです。


これは、自転車の乗り方を口で説明しても乗れるようにならないこと、授業を聞くだけでは問題を解けるようにならないこと、スター・ウォーズを見ただけではフォースは覚醒しないことを考えれば納得がいきますね。


これからの管理職研修も、より実践的な内容にして、普段のマネジメントに取り入れやすいものがいいでしょう。

「わかる」から「できる」というところを目指していきたいです。