上司からのサポートは、心の健康問題を防ぐ上でも業務を進めていく上でも大事になってくるものですが、それはどのようにしたら高めることができるのでしょうか。
そこで、Journal of Business and Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。
Frear, K. A., Donsbach, J., Theilgard, N., & Shanock, L. R. (2018). Supported supervisors are more supportive, but why? A multilevel study of mechanisms and outcomes. Journal of Business and Psychology, 33(1), 55-69.
こちらはサウスカロライナ大学の研究で、上司51名、部下283名を対象とし、
①上司が感じる組織からのサポートと上司が行うサポートの関係
②部下が感じる上司からのサポートと部下のパフォーマンス・コミットメントの関係
について調査しています。
結果としては、
・上司が組織からサポートしてもらっていると感じた場合は上司のサポートは高かった
・上司が組織を支えなければならないと感じた場合は上司のサポートは低かった
となりました。
そして、
・部下のパフォーマンス・コミットメントは、主観的な上司からのサポートと関連していた
ということがわかりました。
この結果を解釈すると、「情けは人の為ならず」ということになりましょうか。
組織が上司を支援することで、上司は部下を支援し、部下のパフォーマンス・コミットメントの向上という形で組織に利益が出るという構造になっています。
自分の経験を振り返ってみても、研修医時代はいろんな診療科をローテーションしましたが、サポート体制が充実してところのほうがパフォーマンスも上がり、学生さんへの指導もできていたと感じます。
逆に、自分が何とかしなければと感じながら働いていた科では、周囲へ気を配る余裕がなくなり、自分のことで精一杯になっていました。
ストレスチェックなどで上司からのサポートが評価できるようになってきましたが、今回の研究結果を考えると、単純に上司からのサポートが少ないから増やしてくださいというだけでは根本的な改善は難しいですね。
上司からのサポートを増やすためには、もっと根底にある組織の文化としてサポート体制を浸透させていく必要がありそうです。
経営陣向けの研修をする機会があったときには、ぜひこの内容をお伝えしていきたいです。