薬指の長さはテストステロンという男性ホルモンに影響されるので、人差し指に対して薬指が長い人は性欲が強い傾向にあるということを聞いたことがある方もいると思いますが、同様にテストステロンが多いと顔の横幅が大きくなることがわかっています(Lefevre et al., 2013)。
そういうわけで、顔の横幅に関連した研究は多く存在しており、顔の横幅が大きい人は権威があって精力的にみられる傾向があります (Geniole et al., 2015; Haselhuhn et al., 2015)。
ということは、顔の横幅が大きいと交渉においても有利になるのでしょうか。
そのあたりについて調べるために、frontiers in Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。
Yang, Y., Tang, C., Qu, X., Wang, C., & Denson, T. F. (2018). Group Facial Width-to-Height Ratio Predicts Intergroup Negotiation Outcomes. Frontiers in Psychology, 9, 214.
こちらは上海科技大学の研究で、中国で経営学を学ぶ学生1,337名を288グループに振り分けて、売り手と買い手の交渉をグループ間で行ってもらいます。
そのときの顔の横幅のグループ平均・最大値と集団間での交渉の成績の関連を線形混合モデルを用いて解析しています。
ちなみに、ここでいう顔の横幅を厳密に表現すると、左右の頬骨の両端までの幅を上唇から上瞼までの高さで割った比率で評価しています(FWHR: Facial Width to Height Ratio)。なので、ただ単に顔が大きい人が補正できるようになっています。
結果としては、
・FWHRの最大値が大きいグループは有意に交渉での成績が良く、特に買い手側のときにその傾向が強くなった
・FWHRのグループ平均が大きい場合も交渉の成績が良くなる傾向はあったが、統計的に有意ではなかった
となりました。
したがって、グループのなかに1人でもFWHRが大きい人がいると、交渉が進めやすい傾向があるということになります。
顔の横幅、恐るべしですね。
実務面での応用を考えると、初対面の相手と交渉に臨むときには相手の能力評価の参考になりそうです。
相手側にFWHRが大きい人がいたら、用心しておいたほうがよいかもしれません。
参考文献
Geniole, S. N., Denson, T. F., Dixson, B. J., Carré, J. M., & McCormick, C. M. (2015). Evidence from meta-analyses of the facial width-to-height ratio as an evolved cue of threat. PloS one, 10(7), e0132726.
Haselhuhn, M. P., Ormiston, M. E., & Wong, E. M. (2015). Men’s facial width-to-height ratio predicts aggression: A meta-analysis. PLoS One, 10(4), e0122637.
Lefevre, C. E., Lewis, G. J., Perrett, D. I., & Penke, L. (2013). Telling facial metrics: facial width is associated with testosterone levels in men. Evolution and Human Behavior, 34(4), 273-279.