2018年9月15日土曜日

座りっぱなしを改善する取り組みは費用効果があることを明らかにしたオーストラリアのディーキン大学の研究


座っている時間が長くなると、死亡率や心血管系リスクが高まることが報告されており(Katzmarzyk et al., 2009)、職場でスタンディングデスクを導入する企業も出てきていますが、費用対効果としてはどうなのでしょうか。



このことについて調べるために、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていた論文を読んでみました。

Gao, L., Flego, A., Dunstan, D. W., Winkler, E. A., Healy, G. N., Eakin, E. G., ... & Wiesner, G. H. (2018). Economic evaluation of a randomized controlled trial of an intervention to reduce office workers’ sitting time: the" Stand Up Victoria" trial. Scandinavian journal of work, environment & health.


こちらは2018年のオーストラリアのディーキン大学の研究で、231名の太り気味のデスクワーカー(BMI ≧ 25)を次の2つのグループに分けて、座っている時間を減らすことの費用対効果を調べています。

①スタンディングデスクを導入し、個人や組織レベルで座る時間を減らすように3か月間指導された介入グループ

②いつも通りに過ごしていたコントロールグループ


この2つのグループが1年後にどのような変化したかというと、

・介入グループのほうが仕事中に座っている時間が46.8分短く、立っている時間が42.2分長かった

・両グループ間で、BMI、生活の質、病気休暇に有意な差はみられなかった

となりました。

ここまでだと、それほど健康にメリットがないような気もしますね。


では、これをオーストラリアの労働人口に当てはめて費用と効果を計算してみると、

・介入のコストは、1人あたり344.43オーストラリアドル

・介入の効果により、寿命を0.010年、健康寿命を0.012年延ばした

となりました。


1オーストラリアドルは約81円ですから(2018年8月12日時点)、介入コストを日本円に換算すると、約28,000円となります。

これにより健康寿命が0.012年延びたわけですから、健康寿命を1年間延ばすコストとしては約230万円となります。


みなさんはこの金額をどのように考えるでしょうか。

大きな金額ではありますが、個人的には230万円で健康に過ごせる期間が1年間増えるのであれば払っても悪くはないと思います。

実際に、オーストラリアの先行研究では、健康寿命を1年延ばすことは5万オーストラリアドル(約400万円)の効果があると報告されているので(Shih et al., 2017)、今回の研究結果も費用効果があるということになります。


その他にも、この研究では評価されていませんが、スタンディングデスクは生産性を高めたり(Garrett et al., 2016)、集中力や認知機能を向上させることも報告されています(Rosenbaum et al., 2017)。

これらのことを考えると、スタンディングデスクを導入するメリットは大きいでしょう。


私も2018年初めから自宅でIKEAのスタンディングデスクを使い始めていますが、以前よりも作業効率が上がったことを実感しています。

興味のある方は試してみてはいかがでしょうか。


参考文献:
Garrett, G., Benden, M., Mehta, R., Pickens, A., Peres, S. C., & Zhao, H. (2016). Call center productivity over 6 months following a standing desk intervention. IIE Transactions on Occupational Ergonomics and Human Factors4(2-3), 188-195.
Katzmarzyk, P. T., Church, T. S., Craig, C. L., & Bouchard, C. (2009). Sitting time and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer. Medicine & Science in Sports & Exercise41(5), 998-1005.
Rosenbaum, D., Mama, Y., & Algom, D. (2017). Stand by Your Stroop: Standing Up Enhances Selective Attention and Cognitive Control. Psychological science28(12), 1864-1867.
Shih, S. T., Carter, R., Heward, S., & Sinclair, C. (2017). Economic evaluation of future skin cancer prevention in Australia. Preventive medicine99, 7-12.