仕事の生産性を高めるために、それぞれの職場で様々な取り組みがされているかと思いますが、仕事の生産性が高い人たちはどのような性格の持ち主なのでしょうか。
このことについて調べるために、Journal of Organizational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。
Young, H. R., Glerum, D. R., Wang, W., & Joseph, D. L. (2018). Who are the most engaged at work? A meta‐analysis of personality and employee engagement. Journal of Organizational Behavior.
こちらは2018年のミシガン大学の研究で、性格と仕事の生産性(ワーク・エンゲージメント)の相関を調べるために、114の先行研究(対象者44,224名)をメタ分析しています。
メタ分析は、今までの関連する研究をまとめて、定量的に評価したものなので、論文のなかでも信頼性は高くなります。
性格については以下の8つに分類されました。
・真面目
・神経質
・外向的
・協調的
・好奇心旺盛
・前向き
・明るい
・暗い
性格分析でおなじみのビックファイブに、下の3つが追加となっています。
そして、これらと仕事の生産性との相関の効果量が求められました。
ちなみに、相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。
では、結果についてみてみましょう。
・真面目 0.39
・神経質 -0.35
・外向的 0.40
・協調的 0.28
・好奇心旺盛 0.28
・前向き 0.49
・明るい 0.62
・暗い -0.25
「明るい」「前向き」「外向的」「真面目」といった性格は生産性が高くなる一方、「神経質」「暗い」といった性格は生産性が低くなる傾向がみられていますね。
言われてみれば、確かに実際その通りに感じます。
そして衝撃的だったのは、解析の結果、
・仕事の生産性の48.1%は性格で決まる
ということです。
特に、「明るい」ということがもつ影響力が大きくて、これだけで生産性の31.1%が決まってしまうようです。
ということは、求人広告に「明るい人募集」と書かれていたり、明るい人が上司からよく評価されたり、とにかく明るい安村さんがブレイクしたりしたのは、あながち間違っていなかったというわけですね。
これを聞くと、私のような神経質で根暗な人たちは「どうすればいいのか」と思ってしまいますが、先行研究では仕事の生産性を高める介入についてのメタ分析も行われています(Knight et al., 2017)。
そこでは、
・個人や職場のリソースを増やす
・リーダーシップ研修を行う
・ヘルス・プロモーションを行う
といった取り組みが、効果量は小さいものの、有意な結果がみられいます。
性格で仕事の生産性の約半分が決まってしまうので、他の部分で劇的に改善することは難しいですが、職場では上の3つの取り組みを行い、個人では運動・瞑想・筆記開示などを行って、自身のメンタルを改善していくことが大切ではないかと思います。
運動・瞑想・筆記開示の効果については以前に書いた記事をご参照ください。
「意外と侮れない!アイルランドのリムリック大学のメタ分析で判明した筋トレの抗うつ効果」
「瞑想とリラクゼーションの効果の違いは反芻思考にあったサンディエゴ州立大学とカリフォルニア大学の研究」
「筆記開示のメンタル改善効果は感情表現が苦手な人にメリットが大きいというテキサス大学とヒューストン大学の研究」
参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Knight, C., Patterson, M., & Dawson, J. (2017). Building work engagement: A systematic review and meta‐analysis investigating the effectiveness of work engagement interventions. Journal of organizational behavior, 38(6), 792-812.