最近流行りの瞑想ですが、よくリラクゼーションと勘違いされる方が多いので、その効果の違いについて調べてみました。
Jain, S., Shapiro, S. L., Swanick, S., Roesch, S. C., Mills, P. J., Bell, I., & Schwartz, G. E. (2007). A randomized controlled trial of mindfulness meditation versus relaxation training: effects on distress, positive states of mind, rumination, and distraction. Annals of behavioral medicine, 33(1), 11-21.
こちらはAnnals of Behavioral Medicineに掲載されていた論文で、2007年にサンディエゴ州立大学とカリフォルニア大学が行った研究になります。
内容としては、83名の学生を対象に、以下の3つのグループに分けました。
・瞑想を行うグループ
・リラクゼーションを行うグループ
・特に何もしないグループ
そして1か月後に、
・ストレス
・ポジティブな感情
・注意散漫
・反芻思考(何度も同じことをくよくよ考えること)
・スピリチュアルな経験
がどのくらい変化したのかについて効果量(Cohen's d)を用いて調べています。
効果量の目安としては、0.3で「小さい」、0.5で「中くらいの」、0.8で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。
結果はどうなったかというと、
・瞑想やリラクゼーションを行ったグループは、特に何もしないグループと比べて、有意にストレスが減り(Cohen's d = 1.36, 0.91)、ポジティブな感情が高まった(Cohen's d = 0.71, 0.25)
・瞑想とリラクゼーションの比較では有意差はみられなかった
・しかし、瞑想を行ったグループは、反芻思考や注意散漫が有意に改善していた(どちらもp < 0.04, Cohen's d = 0.57, 0.25)
となりました。
つまり、瞑想はストレスを減らしたり、ポジティブな感情を高めるだけでなく、反芻思考や注意散漫も改善していく効果があるということになります。
この研究の追加の解析では、瞑想は反芻思考を減らすことが、ストレス低減につながっているようです。
瞑想を「何も考えないこと」と勘違いされている方もいますが、瞑想の本質は「今ここにいること」に意識を向けていくことになります。
現在の呼吸や体の感覚などに集中するため、将来の心配事を考える時間が減るのでしょう。
「それだったら、リラクゼーションを行って、心配事を考えないようにすればいいんじゃないの?」
と思われた方もいるかもしれませんが、人間は考えないようにすることが苦手な生き物なんです。
「シロクマについて考えないでください」と言われると、今までシロクマについてほとんど考えたことがなかったのに、考えてしまいますよね。
それと同じで、心配事について考えないように意識すると余計にそのことを考えてしまうのです。
なので、何か考えたくないことがあれば、別の何かに集中するという戦略が効果的です。
くよくよと同じことを何度も考えてしまう方は瞑想を試してみてはいかがでしょうか。
瞑想の方法はいろいろありますが、一番簡単なのは呼吸瞑想です。
背筋を伸ばした状態で座り、鼻呼吸したときの体の感覚(肺が膨らんだり縮んだり、空気が鼻を通る感覚など)に意識を向けるというやり方です。
途中で意識が逸れると思いますが、それに気づいたらまた呼吸に意識を戻します。
「意識が逸れやすいから自分には向いていない」という方がいますが、意識が逸れること自体は問題ありません。
大事なのは、意識が逸れたのに気づいたら、また呼吸に意識を戻すことです。
これによって、集中力とメタ認知(自分が何を考えているを知ること)が鍛えられます。
瞑想に興味をもった方は、「スタンフォードの自分を変える教室」「サーチ・インサイド・ユアセルフ」「最高の休息法」といった本に瞑想のことがわかりやすく書かれているので、読んでみることをおすすめします。
参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.