2018年8月1日水曜日

イギリスの有名医学雑誌Lancetに掲載された時差ボケ対策の3つのポイント


先日ギリシャに海外出張してきたのですが、疲れているのに朝早く目が覚めてしまうなどの時差ボケの症状を経験しました。そこで、何か良い対策はないかと思い、文献を検索してみました。


Waterhouse, J., Reilly, T., Atkinson, G., & Edwards, B. (2007). Jet lag: trends and coping strategies. The Lancet369(9567), 1117-1129.


こちらは2007年にイギリスの有名医学雑誌The Lancetに掲載された時差ボケ対策に関するレビュー論文です。

まず、時差ボケについて科学的にわかったこととして興味深かったのは、

・3時間以上の時差があるときに生じる
・年をとると起きやすい(理由は不明)
・西回りより東回りのほうが起きやすく、適応するまでに西回りではタイムゾーンの差の半分、東回りではタイムゾーンの差の3分の2の日数が必要(ただし、個人差あり)
・時差ボケを予防する方法はない
・現地の時間が夜でない限り、飛行機では寝ないほうがいい

ということです。

年をとると起きやすいというのは悩ましいですね。時差の大きい移動で短期間の滞在という旅程はなるべく避けたいです。

逆に、旅行などで時差ボケを避けたいなら、時差3時間未満の移動がおすすめということですね。


では、時差ボケ対策についてみていきましょう。論文で紹介されていたのは、こちらの3つになります。

・光による体内時計の調整
・メラトニンによる睡眠の促進
・日中の覚醒の維持

順番にみていきましょう。まずは光による体内時計の調整に関してです。光を浴びる時間と避ける時間を分けて、体内時計を調整しようということが記載されています。




こちらの表は、西回りと東回りのそれぞれの時差に対して、光曝露が良い時間帯と悪い時間帯を示しています。

例えば、西回りに3時間の時差があるところに行ったときは2-8時は光を避け、18-0時に光を浴びたほうがよいということになります(表の一番上の行)。

これは深部体温がもともと何時に最も低くなるかに関係しています。一般的には午前3-7時に最も低くなるのですが、上の表では4時として扱っています。

もし6時に最も体温が低かったら、それぞれの光曝露の時間帯を2時間ずつ遅らせることになります。

例えば、西回りに3時間の時差があるところに行ったときは4-10時は光を避け、20-2時に光を浴びたほうがよいということになります(表の一番上の行)。


次に、メラトニンによる睡眠の促進です。

メラトニンとは睡眠を促すホルモンで、体内では脳の松果体から分泌されるのですが、サプリメントとしても摂取することができます。

メラトニンを寝る2-3時間前に3-5mg服用することが複数の研究で効果的あることが報告されています。ただし、若年者や妊娠中の女性は控えたほうがよいとされています。


最後は、日中の覚醒の維持です。

日中の覚醒を維持するには、カフェインの摂取や明るい場所での軽い運動(観光やゴルフ、テニスなど)が効果があると報告されています。


以上が今回の論文で紹介された3つの時差ボケ対策ですが、いかがだったでしょうか。基本的には、体内時計を調整することが時差ボケ対策の主体となっています。

個人的には、国内にいるときにメラトニンやカフェインのサプリメントを試してみたことはありますが、体に合わなかったためやめてしまいました。

これらのサプリメントを時差ボケ対策で使うときは、事前に試しておくことをおすすめします。時差ボケでつらいのに、さらに体調が悪くなったら最悪ですからね。

また、光の曝露時間に関しては、自分の体温が最低になる時間がわからないため正確なところまで実践することはできませんが、光を浴びないほうがよい時間帯に関しては気をつけていきたいです。