2018年8月18日土曜日

59%の医師はメンタル不調になっても自ら職場に相談することはないというイギリスのカーディフ大学の研究


普段は健康に関して助言や指導を行う立場にいる医師ですが、自らがメンタル不調になったときは、自己開示して周囲にサポートを求めることができるのでしょうか。


このことについて調べるために、Occupational Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。

Cohen, D., Winstanley, S. J., & Greene, G. (2016). Understanding doctors’ attitudes towards self-disclosure of mental ill health. Occupational Medicine66(5), 383-389.


こちらは2016年のイギリスのカーディフ大学の研究で、医師のメンタル不調の有無と職場への自己開示の関係について調べるために無記名のオンライン調査を行っています。

解析条件を満たした回答は1,946件あり、そのうちの60%はメンタル不調を経験していました。

その結果わかったこととしては、

・73%の医師はメンタル不調になったら職場へ自己開示しようと思っている

・しかし、実際にメンタル不調になったとき自己開示したのは41%だった

となりました。


特に、研修医などの若手医師、診療科長などの上級医、代診医では自己開示がされにくく、最も多かった理由としては「レッテルをつけられたくない」ということでした。

また厄介なことに、メンタルヘルスの研修を受けても自己開示のしやすさは変わらなかったという結果も出てしまいました。


医師は健康に関して多くの知識やスキルを持っている分、自分自身がメンタル不調になったときに、それを受け入れて自己開示するには大きな心理的障壁が存在するのでしょう。

私も研修医時代には精神的につらい時期を経験しましたが、ここで誰かに相談すると、「医者に向いていないと思われるのではないか」「今後のキャリアに影響するのではないか」などと考えてしまうこともありました。


医師がメンタル不調を自己開示しにくいという心理的構造を変えることはなかなか難しいので、サポート体制を充実させて早期発見・早期治療につなげたり、外部の相談窓口を設けて秘密性を確保したりするような取り組みが必要と考えられます。

医師のメンタルヘルスを改善させる介入研究にも、今後注目していきたいです。