2018年8月25日土曜日

完璧主義はワーカホリックになりやすいうえに、生産性につながりにくいというジョージア工科大学の研究


完璧主義は物事をきっちりと処理していく一方で(Flett & Hewitt, 2002)、自分に厳しすぎるために健康への悪影響も指摘されており(Flaxman et al., 2012)、職場での生産性を考えたときに、どのような影響が現れるのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Applied Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Harari, D., Swider, B. W., Steed, L. B., & Breidenthal, A. P. (2018). Is perfect good? A meta-analysis of perfectionism in the workplace. The Journal of applied psychology.


こちらは2018年のジョージア工科大学の研究で、完璧主義と職場での態度・行動の相関についてメタ分析しています。

メタ分析とは、関連するテーマの先行研究をまとめて定量的に評価したものなので、研究の信頼性が高くなります。

定量的な評価尺度は効果量とよばれ、相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。


それでは、完璧主義と職場での態度・行動の関連について一気にみてみましょう。

・モチベーション 0.23
・労働時間 0.15
・ワーカホリック 0.49
・エンゲージメント 0.02
・バーンアウト 0.21
・ストレス 0.36
・不安 0.35
・抑うつ気分 0.32
・パフォーマンス 0.02


以上のように、ワーカホリックとの相関が高い一方で、エンゲージメントやパフォーマンスといった仕事の生産性との相関は低いですね。

完璧主義の仕事への影響はあまり良くないようです。


この研究では、完璧主義とビックファイブの性格との相関も調べられているのですが、その結果は以下の通りです。

・勤勉性 0.24
・情緒安定性 -0.24
・協調性 0.09
・外向性 0.10
・開放性 0.27


勤勉性、情緒安定性、開放性で特に相関がみられていますね。

つまり、完璧主義な人は真面目で好奇心が強い反面、神経質な傾向があるということになります。

この神経質な傾向が仕事の生産性につながらない要因の1つとなっているのでしょうか。


著者は完璧主義には2つのタイプがあると指摘しています。

1つは仕事を純粋により良いものにしていこうとするポジティブタイプ、もう1つは周りからの期待に応えるためにはこれくらいはやらなければならないというネガティブタイプです。

タイプ別の解析もされているのですが、ポジティブタイプはモチベーションやエンゲージメントが高くなる一方、ネガティブタイプはストレス、不安、抑うつ気分が軒並み高くなっていました。

ネガティブタイプの完璧主義が特にメンタルに悪影響があるようです。周囲からのプレッシャーを感じて動いているので、当然と言えば当然ですね。


ただ、完璧主義は悪いことなのでしょうか。

私はこの記事を書いていて、ナシア・ガミーの「一流の狂気」を思い出しました。一流のプロフェッショナルには完璧主義が多いのです。

そして、彼らはより多くの現実と真正面に向き合っているため、不安や抑うつ気分を感じやすく、メンタル不調を起こしやすい傾向があります。


大きなことを成し遂げるにはストレスはつきものです。

大事なのは、それといかに向き合い、問題に対処し、自らの健康を維持していくことではないかと思います。


ストレス対処法については、鈴木祐さんの「超ストレス解消法」という本に様々な方法が文献付きでまとまっているので、ぜひそちらを参考にしてみてください。


参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Flaxman, P. E., Ménard, J., Bond, F. W., & Kinman, G. (2012). Academics' experiences of a respite from work: Effects of self-critical perfectionism and perseverative cognition on postrespite well-being. Journal of Applied Psychology97(4), 854.
Flett, G. L., & Hewitt, P. L. (2002). Perfectionism and maladjustment: An overview of theoretical, definitional, and treatment issues.