2018年11月7日水曜日

シェフィールド大学の系統的レビューで明らかになったメンタル休職者の職場復帰のリスクファクター


休職中の方と面談していると、本人や上司から「どのくらいで復職できますか」という質問をよく受けます。確かに切実な問題でありますが、個々のケースによって期間は様々であることも事実。復職の予測因子としてはどのようなものが存在するのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Occupational Rehabilitationに掲載されていた論文を読んでみました。

Blank, L., Peters, J., Pickvance, S., Wilford, J., & MacDonald, E. (2008). A systematic review of the factors which predict return to work for people suffering episodes of poor mental health. Journal of occupational rehabilitation18(1), 27-34.

こちらは2008年のシェフィールド大学の研究で、メンタル不調者の職場復帰のリスクファクターについて扱っている14の先行研究を対象に系統的レビューを行っています。


さっそく結果についてみていきますが、職場復帰のリスクファクターとしては、まず以下の4つのカテゴリーにまとめられました。

・仕事の要因
・健康に悪影響のある行動
・社会経済状況
・医学的な要因


どれも職場復帰と関連しそうな項目であります。

では、それぞれの項目について具体的にどんなものが含まれているか順番にみていきましょう。

仕事の要因
・職位が低い
・仕事のストレスが大きい
・組織の再編成
・失業への恐れ
・労災
・使える保険がない
・仕事を休み始めてから505日以内に復職に向けた取り組みができないこと

健康に悪影響のある行動
・太りすぎ
・やせすぎ
・喫煙者
・薬物依存

社会経済状況
・独身、離婚、配偶者との死別
・年配者
・教育歴が低い

医学的な要因
・恐怖症がある
・軽微な精神障害がある
・症状の重症度


様々なものがリスクファクターとなっていますが、だいたいどれも復職に悪影響がありそうなことは想像しやすいですね。


意外だったのは、本人の精神医学的な要因以外にも、年齢、婚姻状況、教育歴、経済的不安、休職期間の長さ、体型などの多くの要因が復職のリスクファクターになっていたこと。


これらは本人や身近な人であれば簡単にわかるものばかりなので、医療従事者の方ではなくても、ある程度は参考になるのではないでしょうか。


今回の研究では結婚していないことがリスクファクターとなっていますが、私のように独身で働かれている方も多いはず。


そのような方への対策の1つとしては、周囲のサポートが得られる環境で療養することです。



2001年にノルウェーのトロムソ大学が行った研究では、ソーシャルネットワークは仕事のストレスによるメンタルヘルスへの悪影響を緩和する働きがあることが報告されています(Olstad et al., 2001)。


周囲のサポートが得られるような安心した環境で療養することは病状の回復にもつながると考えられます。


実務面での応用方法としては、一人暮らしの方が実家に戻って療養するケースが多く、実際にその後の病状の経過が良くなる傾向がみられています。


家族関係などに問題がなければ、有効な対策だと思います。

参考になれば、活用してみてください。



参考文献:
Olstad, R., Sexton, H., & Søgaard, A. J. (2001). The Finnmark Study. A prospective population study of the social support buffer hypothesis, specific stressors and mental distress. Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology36(12), 582-589.