仕事をしていくうえでストレスは必ず生じるものであり、いかにうまくストレスと付き合っていくかが大事になりますが、科学的に効果的だと証明されたストレス対策は存在するのでしょうか。
このことについて調べるために、2015年に発表されたコクラン共同計画の論文を読んでみました。
Ruotsalainen, J. H., Verbeek, J. H., Mariné, A., & Serra, C. (2015). Preventing occupational stress in healthcare workers. Cochrane Database of Systematic Reviews, (11).
コクラン共同計画というのは、エビデンスに基づいた質の高い医療情報を提供するために設立された組織で、今までの研究を定性的にまとめた系統的レビューや定量的にまとめたメタ分析を専門的に扱っています。
今回の研究では、医療従事者のストレス予防対策に関する58の先行研究(7,188名)を対象としてメタ分析を行っています。
具体的なストレス予防対策としては、
・認知行動療法(物の見方を修正する心理療法)
・身体的なリラクゼーション(マッサージや運動など)
・精神的なリラクゼーション(瞑想など)
・職場介入(労働条件の変更、サポートの充実、コミュニケーションスキルの向上、勤務スケジュールの変更)
の4つが解析対象となりました。
ストレス予防の効果としては、どのくらいストレスや不安が減ったか、どのくらい健康状態が良くなったかということを効果量を用いて時系列ごとに評価しています。
効果量の目安としては、0.3で「小さい」、0.5で「中くらいの」、0.8で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。
では、4つのストレス予防対策の結果についてみてみましょう。
認知行動療法
・1か月後では統計的に有意な効果はみられない
・1-6か月後と6カ月以降では、ストレスは有意に減少(効果量 -0.38, -1.04)
身体的なリラクゼーション
・1か月後、1-6か月後でストレスは有意に減少(効果量 -0.48, -0.47)
精神的なリラクゼーション
・1-6か月後では、統計的に有意な効果はみられない
・6か月以降では、ストレスは有意に減少(効果量 -1.89)
職場介入
・勤務スケジュールの変更(週末に休日をもうけたり、4週間勤務を2週間勤務に変更したりすること)は、ストレスを有意に減少(効果量 -0.55)
・その他の職場介入では、統計的に有意な効果はみられなかった
どれもストレスを改善する効果はありますが、その特性は異なっていますね。
身体的なリラクゼーションは早い時期に効果が出る一方、認知行動量や精神的リラクゼーションが効果が出るまで時間がかかり、職場介入としては休日の設定が重要となっています。
ストレス対策として、即効性を期待するのであれば身体的リラクゼーション、根本的なストレス対処力を鍛えたいのであれば認知行動療法や精神的リラクゼーションという形で目的に応じて使い分けていくことができそうです。
職場介入として休日の設定以外に効果的な方法がみられなかったのは意外でしたが、このあたりはまだ十分に研究されているわけではないので、これからのデータの蓄積で変わってくるかもしれません。
現状としては、週末にしっかり休日を設定して休息することが仕事のストレス対策として有効であることがわかったので、産業医面談などの実務面でもお伝えしていきたいです。
今回の内容をまとめると、仕事のストレス対策として効果的な4つの方法としては、
・認知行動療法
・身体的リラクゼーション
・精神的リラクゼーション
・勤務スケジュールの変更(休日の設定)
となります。
ご参考になれば、活用してみてください。
参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.