職場での信頼関係を築いていくことは仕事を進めるうえで大事なことですが、日々のコミュニケーションは信頼関係にどのような影響を与えるのでしょうか。
このことについて調べるために、Journal of Applied Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。
Schilke, O., & Huang, L. (2018). Worthy of swift trust? How brief interpersonal contact affects trust accuracy. The Journal of applied psychology.
こちらは2018年のアリゾナ大学の研究で、498名の被験者を対象に、信頼ゲームというものを行っています。
ここでいう信頼ゲームとは、2人1組になって、一方が2ドルを受け取ります。
その2ドルをそのまま持っていてもよいですが、相手に渡すと、3倍の6ドルになります。
ただし、渡された相手はその6ドルをそのまま自分のものにすることもできますし、相方と3ドルずつシェアすることもできます。
つまり、最初に2ドル渡すかどうかは最終的に相手が3ドルくれるかどうかを見抜く必要があります。
相手には6ドルを得たときに、全部自分のものにするか3ドルずつシェアするか事前に決めてもらいます。
これにより、最初に2ドル受け取った側は、相手が6ドル総取りしようとしていたときに2ドルを渡さなかったり、相手が3ドルずつシェアしようとしていたときに2ドルを渡したりしたとき、相手の信頼性を見抜けたと判断されます。
このゲームを異なる条件下でどのくらい信頼性を見抜けるか評価するために、被験者は次の4つのグループに分けられました。
①ゲーム前に相手の名前しか与えられなかったグループ
②ゲーム前に相手の写真を与えられたグループ
③ゲーム前に相手と5分間電話で話したグループ
④ゲーム前に相手と直接会って5分間話したグループ
それぞれのグループで相手の信頼性を見抜けた確率はどうなったかというと、
・相手の名前しか与えられなかったグループは48%
・相手の写真を与えられたグループは58%
・相手と5分間電話で話したグループは80%
・相手と直接会って5分間話したグループは78%
という結果になりました。
相手と5分間電話で話したグループは、名前しか与えられなかったグループと比べて、約1.67倍も相手の信頼性を見抜けているということになります。
5分間話しただけでも結構変わるもんですね。
また、相手と会話したグループは、写真を与えられたグループよりも成績がよくなっていました。
信頼性を評価するのには、視覚的な情報よりも言語的な情報のほうが役立つということになります。
まぁ確かに、言葉のほうがその人の考え方や価値観が現れやすいですからね。
この研究では、相手を信頼する確率も調べられているのですが、相手と話をするとお互いを信頼する確率も高くなっています。
たった5分の会話でも信頼関係の構築につながるようです。
そう言われてみると、身の回りのデキる人たちは、日常のコミュニケーション方法として、メールやLINEだけでなく、電話をよく使っている気がします。
あれは、情報伝達の役割だけでなく、信頼関係の構築に役立っていたんですね。
相手の信頼性を見抜いたり、相手と信頼関係を築きたい方は、今回の研究を参考に、文字ではなく声の会話をしてみてはいかがでしょうか。