2018年10月24日水曜日

オランダのマーストリヒト大学のメタ分析で明らかになった、メンタル不調による病気休暇の予測因子


産業医として働くなかで、職場からのニーズが最も高いと感じられるのが職場復帰対応ですが、そもそもメンタル不調によって仕事をお休みしてしまうリスクファクターとしてはどのようなものが存在するのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Clinical Epidemiologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Duijts, S. F., Kant, I., Swaen, G. M., van den Brandt, P. A., & Zeegers, M. P. (2007). A meta-analysis of observational studies identifies predictors of sickness absence. Journal of clinical epidemiology60(11), 1105-1115.


こちらは2007年のオランダのマーストリヒト大学の研究で、メンタル不調による病気休暇の予測因子について調べた20の先行研究をメタ分析しています。


メタ分析とは、今までの関連するテーマの研究をまとめて、定量的に評価したもののことをいいます。

複数の研究をまとめているため、研究の信頼性は高くなります。


この研究では、メンタル不調による病気休暇(4日以上)の予測因子をオッズ比を用いて評価しているのですが、有意な結果が得られたものとしては以下のようなものがみつかりました。

・独身 1.37
・心身の不調を経験 1.79
・薬物治療を行っている 3.13
・バーンアウト 2.34
・心理的な問題を抱えている 1.97
・仕事のコントロール感がない 1.28
・裁量権がない 1.33
・職場での不公平を経験 1.30


結果をみると、薬物療法を行っていることが病気休暇に最もつながりやすいですね。

これは、薬物療法の効果を考えれば、薬自体が病気休暇を促しているというわけではなく、薬物療法が必要なほど状態が悪いと病気休暇につながりやすいと解釈したほうがよいでしょう。

それに、通院して状態が悪ければ、主治医から仕事を休むことを提案されることもありますしね。


次に病気休暇につながりやすい要因としては、バーンアウトとなっていますね。

以前に、「メンタル不調につながりやすい仕事のストレス」や「バーンアウトが生じやすい個人・職場要因」という記事を書きましたが、そこでは努力報酬不均衡(努力が報われないこと)が最もメンタル不調につながりやすいという結果になっていました。


バーンアウトはこの努力報酬不均衡と関連があるとも報告されており(Unterbrink et al., 2007)、やはりメンタルに与える影響は大きいのでしょう。



その他の予測因子では、裁量権やコントロール感といったストレス緩和要因が認められるのに対して、仕事の量や質といったストレス増強要因は認められませんね。


このあたりは以前に「メンタル不調による長期休職は同僚のストレスを増やす」という記事でも触れましたが、ストレス反応に与える影響は、ストレス増強要因よりもストレス緩和要因のほうが大きいことを物語っています。


ストレスマネジメントとしては、仕事の量や質をコントロールしていくことも大事ですが、周囲のサポートや裁量権といったストレス緩和要因を増やしていくことが病気休暇を防いでいくうえでも重要になりそうです。


参考文献:
Unterbrink, T., Hack, A., Pfeifer, R., Buhl-Grießhaber, V., Müller, U., Wesche, H., ... & Bauer, J. (2007). Burnout and effort–reward-imbalance in a sample of 949 German teachers. International archives of occupational and environmental health80(5), 433-441.