2018年10月13日土曜日

在宅介護によってどの程度ストレス反応が生じやすいかを明らかにした北里大学の研究


精神科の外来や産業医面談をしていると、家族の介護が大きな負担となっていることを訴える方がよくいらっしゃいますが、実際のところ、ストレス反応にはどの程度つながりやすいのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Occupational Healthに掲載されていた論文を読んでみました。

Eguchi, H., & Wada, K. (2018). Mental health of working-age populations in Japan who provide nursing care for a person at home: A cross-sectional analysis. Journal of occupational health, 2017-0295.


こちらは2018年の北里大学の研究で、2013年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査のデータを二次利用して、25-65歳の世帯主38,958名を対象として、在宅介護の有無とストレス反応(精神的苦痛)について調べています。


ストレス反応を調べるためには、K6という尺度が用いられています。

ストレス反応を0~24点で評価する尺度なのですが、点数が高くなるほどストレス反応も高くなり、今回の研究では13点以上を精神的苦痛があると判断しています。


結果はどうなったかというと、

・対象者の2.9%が在宅介護を行っていた

・在宅介護を行っていると、精神的苦痛を40%感じやすかった

となりました。


やはり、在宅介護のストレスが精神面に与える影響はそれなりに大きいですね。

精神科の臨床現場では、認知症の患者さん本人よりも、介護をしている家族のほうが疲れてしまって、精神的に不調をきたすことがあるのですが、それも納得できます。


産業保健の現場では、仕事のストレスに注目しがちですが、在宅介護のようなプライベートのストレスも大きなインパクトを持っているので、忘れずに聴取して、他の家族の協力や福祉サービスの活用などのサポート資源についても検討していきたいです。