2018年10月20日土曜日

職場でのいじめは直接被害を受けていなくてもメンタルに悪影響を及ぼすという和歌山医科大学の研究


産業医として働いていると、職場のいじめが問題となっているケースに遭遇することもあるのですが、職場でのいじめは精神的にどのような影響をもたらすのでしょうか。


このことについて調べるために、Journal of Occupational and Environmental Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。

Tsuno, K., Kawachi, I., Kawakami, N., & Miyashita, K. (2018). Workplace Bullying and Psychological Distress: A Longitudinal Multilevel Analysis Among Japanese Employees. Journal of occupational and environmental medicine.


こちらは2018年の和歌山医科大学の研究で、公務員3,142名を対象に、職場のいじめとストレス反応(精神的苦痛)の関係について1年間のフォローアップ調査を行っています。


結果はどうなったかというと、

・職場でのいじめがあると、個人のストレス反応は高くなる

・ただし、個人的にいじめを受けた経験とストレス反応には関連がみられなかった


となりました。


つまり、いじめの直接的な被害は受けていなくても、職場でいじめが存在しているとストレス反応につながるということになります。


確かに、誰かがいじめられているような職場では働きたくないですよね。

そういう職場は雰囲気や居心地が悪いですし、周りにも気を遣って、仕事に集中しにくいと思います。



今回の研究結果を知ったら、職場でいじめを目撃したときに、「私のメンタルに悪いので、ちょっとやめてもらっていいですか?」と言いたくなりますね。


以前に書いた「職場のハラスメントは当事者だけでなく組織にも悪影響をもたらす」という記事でも、職場でのいやがらせがあると、組織へのコミットメントが低下して、転職の意向が強まることが報告されています


職場のいじめは決して他人事ではないですね。

一人で対処しにくい場合は、上司や同僚の協力を得るなどして、いじめ被害者だけでなく自分の心も守るようにしていきたいところです。