2018年7月4日水曜日

職場のハラスメントは当事者だけでなく組織にも悪影響をもたらすという中央ミシガン大学の研究



ハラスメント対策は多くの職場で取り組まれている課題かと思いますが、職場のハラスメントはどのような状況で起き、個人と組織にどのような影響を与えるのでしょうか。

このあたりについて調べるために、Journal of Applied Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。

Bowling, N. A., & Beehr, T. A. (2006). Workplace harassment from the victim's perspective: a theoretical model and meta-analysis. Journal of Applied Psychology91(5), 998.

こちらは中央ミシガン大学の研究で、職場のハラスメントとその要因・結果に関するメタ分析を行っています。条件を満たしたものは90サンプルあり、そのなかで職場のハラスメントとその要因・結果の相関係数を求めています。

なお、職場のハラスメントの要因・結果について回答しているのはハラスメントを受けた側であり、被害者側からの視点で評価されています。

ではさっそく結果についてみていきましょう。

職場のハラスメントの要因としては、

・仕事の制約(r = 0.53)
・相反する役割(r = 0.44)
・役割の曖昧さ(r = 0.33)

などで、ある程度の相関がみられました。

一方で、

・被害者の性(r = -0.05)
・年齢(r = -0.04)
・在職期間(r = 0.01)

ではほとんど相関がみられませんでした。

職場のハラスメントの結果としては、

・職場での陰性感情(r = 0.46)
・仕事の手抜き(r = 0.37)
・組織へのコミットメント(r = -0.36)
・組織の公平性(r = -0.35)
・転職の意向(r = 0.35)

などで比較的相関がみられました。

一方、

・仕事のパフォーマンス(r = -0.08)
・アブセンティーズム(r = 0.06)

ではほとんど相関がみられませんでした。


被害者の性・年齢・在職期間が職場のハラスメントとほとんど相関がみられないのは意外でしたが、逆に考えると職場のハラスメントは性・年齢・在職期間に関係なく受けるということになります。

そして、職場のハラスメントが起きると、仕事の手抜きが増え、組織へのコミットメントが低下して、転職の意向が強まるため、個人だけでなく組織にも影響を及ぼします。

やはり、職場のハラスメントは当事者間の問題として捉えるのではなく、組織全体の問題として取り組む必要があるでしょう。


このような問題にきちんと取り組んでいるかどうかは組織の健全さを評価する指標の1つとしても考えられそうです。