2018年7月11日水曜日

慈恵医大の研究で判明した、メンタル不調に気をつけたい2つの業種


以前に、「世界の中で長時間労働が抑うつ症状を引き起こしやすいところはどこか」という記事で、アジアは特に長時間労働による精神的な影響を受けやすいということを紹介しましたが、業種としてはどこが精神的な影響を受けやすいのでしょうか。


このことについて調べるために、Occupational Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。

T Yamauchi, T Sasaki, T Yoshikawa, S Matsumoto, M Takahashi; Incidence of overwork-related mental disorders and suicide in Japan, Occupational Medicine, , kqy080, 


こちらは慈恵医大の研究で、日本で2010年1月から2015年3月の間に生じた精神疾患と自殺で労災補償されたケースを対象として、性別・年齢・業種ごとの発生率(100万人あたり)を解析しています。

解析対象となった労災補償件数は1,990件(男性1,371名、女性619名)で、そのうち自殺は379件(男性362名、女性17名)でした。

精神疾患の発生率が高い業種は、
男性では
・漁業(24.0)
・ホテル・飲食業(14.8)
・情報・通信業(14.0)
・学術研究業(13.8)

女性では
・運送業(12.3)
・情報・通信業(11.6)
・学術研究業(8.2)
となりました。

自殺の発生率が高い業種は、
男性では
・学術研究業(4.7)
・情報・通信業(3.9)
・電気・ガス・水道業(3.5)

女性では
・農業(0.9)
・情報・通信業(0.8)
・不動産業(0.6)
となりました。


漁業や女性の自殺に関しては母集団が少ないので参考値として考えたほうがよいでしょう。

それ以外の部分で考えると、学術研究業や情報・通信業で長時間労働によるメンタル不調が生じやすいですね。特に、これらの業種では30歳未満の若い世代での発生が多くなっています。

論文の考察部分では、これらの業種は長時間労働に陥りやすいことが指摘されています。

研究業では仕事と私生活の区別が曖昧になりやすいですし、情報・通信業では突発的な対応やノルマが多いことなどが長時間労働につながりやすそうです。

これらの業種では特に若い世代が精神的な影響を受けやすいことが報告されているため、上司や同僚のサポートを充実させていくような取り組みが必要と考えられます。


また、今回の調査では公務員が除外されていました。

調査を行う上で何らかの障害があったのかと思いますが、公務員の職場も仕事量が多くて裁量権のない傾向があるため、どのような結果だったのか気になるところです。

また関連する文献をみつけたときは紹介していきます。