2018年7月7日土曜日

イギリスの名門King's College Londonに留学した若手研究者が発見した、海外勤労者の6つのストレス要因


以前に、「海外で働くにはどのような人材が適しているか」について書きましたが、そもそも海外で働くときにはどのようなストレスがかかるのでしょうか。


このことについて調べるために、International Archives of Occupational and Environmental Healthに掲載されていた論文を読んでみました。

Doki, S., Sasahara, S., Matsuzaki, I. (2018). Stress of working abroad: a systematic review. International Archives of Occupational and Environmental Health.

こちらの論文はなんと私の尊敬する研究室の先輩、道喜将太郎先生が執筆しています。道喜先生は誠実性・勤勉性に優れ、後輩の面倒見がとても良い方です。私が院生のときには、わざわざ朝6時に時間を作って学位論文の指導をしていただきました。

研究室内におけるその献身性は、ナイチンゲールやマザーテレサに匹敵するレベル。大迫並みに、半端ないのであります。

そんな道喜先生は筑波大学大学院を卒業後、イギリスの名門King's College Londonに留学しました。異国の慣れない言語や文化と悪戦苦闘しながらも、自身の飽くなき向上心を支えとして、海外の労働衛生に関する知見を深めていきました。

そして、その集大成として完成させたのが、こちらの論文というわけです。まさに、留学生活における地道な努力が実を結んだ賜物といえるでしょう。


実際にどのような研究内容かというと、海外勤労者のストレスについて記載している文献を検索し、ヒットした14,994の文献の中から条件の合う45の文献まで絞りこみ、系統的レビューを行っています。

私の見解としては、これだけの膨大な文献をチェックするのはかなりの労力だったかと思います。これを成し遂げられたのは、献身性の半端ない道喜先生だからこそでしょう。


では、結果はどうなったかというと、海外で働くときに6つのストレス要因が存在することが判明しました。

具体的には、
・コミュニケーション
・文化の違い
・日常生活(ワークライフバランスの乱れなど)
・友人や同僚との人間関係
・経済的問題
・社会的不平等
の6つとなります。


確かに、どれも海外で働くときにストレスになりそうであります。

興味深かったのは、コミュニケーションの部分です。質的研究ではコミュニケーションがストレスになると指摘する一方で、量的研究ではコミュニケーションは重要でないと報告しています。

この違いについて、道喜先生は以下の3つの原因を挙げています。
①現地の言葉を使う機会が少ない(外国語教師など)
②現地の言葉を使うことを求められていない(農家など)
③外国語が苦手な人はそもそも海外で働かない

これはつまり、コミュニケーションは海外で働くときに主なストレス要因になりそうですが、職場によってはそうでもないということになります。

そう考えると、日本語、日本食、日本の芸術・スポーツなどの日本文化を伝える仕事に関しては、日本人でも海外で働きやすいかもしれません。

母国語が海外の職場でも使えるかどうかは、現地での適応を判断するうえで1つの指標になりそうです。

将来海外で働いてみたい方は参考にしてください。