ユーモアとストレスレベルには関連があることが報告されていますが(Abel, 2002)、職場でのストレス対策に応用できることはあるのでしょうか。
このことについて調べるために、Journal of Business and Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。
Cheng, D., Amarnani, R., Le, T., & Restubog, S. (2018). Laughter Is (Powerful) Medicine: the Effects of Humor Exposure on the Well-being of Victims of Aggression. Journal of Business and Psychology, 1-14.
こちらはオーストラリア国立大学の研究で、職場で責められたときにユーモアはストレス反応を緩和するのかということについて調査しています。
ここでは4つの実験が行われており、それぞれの対象者は
①フィリピンの大学生84名
②オーストラリアの大学生205名
③労働者175名
④労働者235名
となっています。
それぞれの実験で被験者は、職場で「自分勝手!」「役立たず!」と罵られるビデオを見るのですが、ユーモア群では自分を罵っていた人が最後にオナラをする場面があり、非ユーモア群ではその場面はありません。
センスの良いユーモアとはいえませんが、万人共通のユーモアとしては使いやすいのでしょう。
結果がどうだったかというと、4つの実験すべてにおいてユーモア群は非ユーモア群と比べて有意にストレス反応が低くなりました。
これらの実験ではユーモアとストレス反応を媒介するものについても調査されているのですが、そこでは自信の存在が指摘されています。
つまり、ストレスフルな状況に直面しても、笑えるようなユーモアがあれば、何とかその状況を乗り越えられるだろうといった自信につながり、ストレス反応が生じにくいのではないかと著者は考えているのです。
個人的には、困難な状況でユーモアを用いることは、脱フュージョンになっているのではないかと思います。
脱フュージョンとは思考したイメージと現実に距離をもたせる認知療法の1つです。
職場で責められたときは、「自分はダメな人間だ」と思考して、それを現実だと捉えやすいですが、そこにユーモアを加えることで、ネガティブな思考と現実に距離が置けるのです。
具体的な方法としては、ネガティブな思考を歌にしてみたり、アニメ声で言ってみたりすることなどがあります(Harris, 2011)。
私は仕事でどうでもいい雑用を任されたなと思ったときは、鬼束ちひろさんの「月光」の1フレーズを利用して、「こんなものの〜ために生まれたんじゃな〜い」と心のなかで歌ってみたりしています。
もしよろしければ、参考にしてみてください。
参考文献
Abel, M. H. (2002). Humor, stress, and coping strategies. Humor–International Journal of Humor Research, 15(4), 365-381.
Harris, R. (2011). The Confidence Gap: A Guide to Overcoming Fear and Self-Doubt. Shambhala Publications.