2018年7月14日土曜日

仕事での成功を感じるためには4つのハードルを乗り越えなければならないという香港大学の研究



働くからには仕事で成功したいと思うのは当然のことですが、どのようにしたら仕事での成功を感じることができるのでしょうか。

このことについて調べるために、Journal of Vocational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。

Ng, T. W., & Feldman, D. C. (2014). Subjective career success: A meta-analytic review. Journal of Vocational Behavior85(2), 169-179.

こちらは香港大学の研究で、仕事での主観的な成功について調査した論文をメタ分析しています。191文献から216の独立したサンプル(N = 94,090)を抽出し、仕事での主観的な成功と仕事でのハードルの相関を求めています。

つまり、この研究では仕事での主観的な成功を感じにくくするものは何かということについて調査しています。

これを知ることで問題点に対処し、仕事での成功を感じやすくしようというのがこの研究の目的になります。

仕事でのハードルは先行研究から、
・バックグラウンド(女性であることなど)
・本人の特性(感情の不安定性など)
・モチベーション(仕事の意欲の低さなど)
・スキル(国際経験の乏しさなど)
・ソーシャルネットワーク(上司の支援の低さなど)
・職場環境(仕事の不安定性など)
の6つに大きく分類され、それぞれの項目に対してさらに細かい分類が存在します。

仕事での主観的な成功と相関があったものとしては、
・本人の特性
・モチベーション
・ソーシャルネットワーク
・職場環境
が認められました。

一方で、
・バックグラウンド
・スキル
については有意な相関はみられませんでした。


つまり、仕事での成功を感じるためには、本人の特性、モチベーション、ソーシャルネットワーク、職場環境の4つのハードルを乗り越えることが大事ということになります。

本人の特性やモチベーションを改善するには認知の修正などが必要になるので、すぐに解決できる問題ではありませんが、対処法としてはジョブ・クラフティングを行ってみることをおすすめします。

ジョブ・クラフティングとは、担当する仕事を自ら主体的に意味あるものに作り替えていく行動のことをいいます。

例えば、今やっている仕事を「お金をもらうために働いている」と考えるのではなく、「必要なスキルを身につけるために働いている」とか「社会に貢献するために働いている」と考え、それを実現するために行動していくことです。

先行研究では、ジョブクラフティングによって、仕事の生産性や労働者の健康が高まったことが報告されています(Gordon et al., 2018)。


仕事でやらされ感が出ると、社会の歯車になってしまい、モチベーションは低下していきます。そうならないようにするには、主体的に現状の問題を考え、取り組んでいくことが必要なのです。

最初から大きなことをやろうとすると挫折したときの努力報酬不均衡が大きくなるので、はじめは今の仕事を1分でも1秒でも早く終わらせるにはどうしたらいいかなど小さなことから始めていくことがよいでしょう。

自分が工夫したことによって物事を改善できると大きなモチベーションになるはずです。


ジョブクラフティングの話はここまでにして、仕事での成功を感じるために、ソーシャルネットワークと職場環境をどのように改善していくか考えていきましょう。このあたりは職場のマネジメントにも関わってくるところですね。

特に仕事での主観的な成功と相関が大きかったのは、ソーシャルネットワークでは上司の支援の低さ(r = -0.58)、職場環境では期待への見合わなさ(r = -0.77)となっていました。

ということは、職場でのマネジメントとしては、部下から仕事に関する意見を聴取して、今後の仕事の進め方をすり合わせるとともに、必要なサポートがあれば行っていくことが重要になります。

この研究の考察でも、「従業員が仕事に何を求めているのか見つけることが最も重要なステップだ」と書かれており、やはりそのあたりが仕事での主観的な成功を高めるうえで鍵となるようです。

仕事での主観的な成功を高めたい方はご参考にしてください。


参考文献
Gordon, H. J., Demerouti, E., Le Blanc, P. M., Bakker, A. B., Bipp, T., & Verhagen, M. A. (2018). Individual job redesign: job crafting interventions in healthcare. Journal of Vocational Behavior104, 98-114.