AIで様々なことができる世の中になってきましたが、休職者の復職判定をAIが行うことは可能なのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Journal of Occupational and Environmental Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。
Na, K. S., & Kim, E. (2019). A Machine Learning-Based Predictive Model of Return to Work After Sick Leave. Journal of occupational and environmental medicine.
こちらは2019年の嘉泉大学校の論文で、韓国の2,000名の労働者のデータを用いて、AIによる復職判定の効果を検証しています。
方法
どのようにしてAIで復職判定を行ったかというと、まず先行研究から復職に関連する以下のような要因をピックアップしました。
・個人要因(性別、年齢など)
・仕事要因(雇用形態、過去の勤務期間など)
・休職サポート(職場との連絡、休職補償、リハビリプログラムの提供など)
・心理学的要因(自尊心、自信など)
そして、これらの情報を勾配ブースティング(GBM)という機械学習の手法を用いてAIにインプットし、復職可能な状態の特徴を理解させ、復職判定の法則を作らせます。
最後に、この法則を運用して、既に復職の有無がわかっている2,000名の労働者データを対象に、2つの分類(復職の可否)と3つの分類(同じ職場で復帰、他で復帰、復帰できない)について、AIによる復職判定の効果を測定したというわけです。
まとめると、AIに復職に必要な情報をインプットさせ、復職の特徴や法則を作らせて、独自で復職判定の運用をできるようにさせたことになります。
結果
では、気になる結果はこうなりました。
・2つの分類(復職の可否)については、正解率90.7%で予測できた
・3つの分類(同じ職場で復帰、他で復帰、復帰できない)では、正解率60.2%だった
復職の可否の正解率はなかなかのものですが、3つの分類になると正解率はだいぶ下がってしまうようですね。
解釈
今回の研究結果をみると、復職の可否といった2つの分類であれば、AIである程度復職判定できるようです。
現段階では、復職判定の参考にはなるのかなと思います。
ただし、3つの分類になると、だいぶ正解率が落ちてしまうので、細かい判定まではできないでしょう。
復職判定は、本人の経済状況を左右する重要な決定となるため、AIを実用化するためには質を高めていく必要があります。
今後、先行研究のデータを積み重ねて、さらに正解率の高いAIが出てくるとよいですね。
そうなると、私の仕事はなくなってしまうかもしれませんが笑