目とうつ病の関連については瞳孔やサッケード(小さな眼球運動)が以前から指摘されてきましたが(Siegle et al., 2011; Winograd-Gurvich et al., 2006)、これらを肉眼で評価するのはなかなか難しく、あまり実用的ではありません。
その他に、メンタル不調の早期発見に役立つような指標は存在するのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、IEEEに掲載されていた論文を読んでみました。
Alghowinem, S., Goecke, R., Wagner, M., Parker, G., & Breakspear, M. (2013, September). Eye movement analysis for depression detection. In 2013 IEEE International Conference on Image Processing (pp. 4220-4224). IEEE.
こちらは2013年のオーストラリア国立大学の論文で、重度のうつ病患者30名と健常者30名を対象としてインタビュー調査を行い、その際の目の動きをビデオカメラで記録しています。
この動画を解析することにより、うつ状態と健康な状態で、目の動きにどのような違いが出るのか調べたというわけです。
結論
さっそく結果を言ってしまうと、うつ病患者では以下のような特徴がみられました。
・左方向を見る時間が長い
・目の開き(上まぶたと下まぶたの距離)が小さい
・まばたきの回数には違いがみられないが、まばたきの時間は長い
瞳孔やサッケードよりはわかりやすい項目が挙げられていて、これなら参考にできそうですねぇ。
解釈
この論文でも指摘していますが、このような結果がみられたのは、「疲労」や「アイコンタクトの回避」を反映しているのでしょう。
この前紹介した「うつ病に特徴的な頭の動き」では、右方向の視線が増えていましたが、アイコンタクトを避けることが目的であれば、そのときの状況に応じて視線の方向が変わるのかなぁと思います。
目の開き具合もうつ病と関連していましたが、個人的には「やはりそうだったのか!」と感じました。
というのも、診察や産業医面談の場面では、ある一定の割合で半目で話す方々(主に男性)がいるんですよねぇ。
前々から不思議に思っていたのですが、どうやらうつ病のサインの1つとして捉えたほうが良さげみたいです。
また、まばたきの回数ではなく、時間が長くなるというのは新しい発見でした。
具体的な時間が論文に書かれていなかったのは残念ですが、確かに疲れたり眠くなったりすると、まぶたが重くなる感じはします。
主に、疲労感を反映しているのかなと思いますが、これから診察や面談の場でチェックしてみたいです。
参考文献:
Siegle, G. J., Steinhauer, S. R., Friedman, E. S., Thompson, W. S., & Thase, M. E. (2011). Remission prognosis for cognitive therapy for recurrent depression using the pupil: utility and neural correlates. Biological Psychiatry, 69(8), 726-733.
Winograd-Gurvich, C., Georgiou-Karistianis, N., Fitzgerald, P. B., Millist, L., & White, O. B. (2006). Ocular motor differences between melancholic and non-melancholic depression. Journal of affective disorders, 93(1-3), 193-203.