精神科では検査でわかるような客観的な診断基準はないため、うつ病の診断は本人との診察を通して行われるわけですが、話し方から診断の参考になるものは存在するのでしょうか。
文献
このことについて調べてみるために、Current Psychiatry Reviewsに掲載されていた論文を読んでみました。
JH Balsters, M., J Krahmer, E., GJ Swerts, M., & JJM Vingerhoets, A. (2012). Verbal and nonverbal correlates for depression: a review. Current Psychiatry Reviews, 8(3), 227-234.
こちらは2012年のティルブルフ大学の論文で、うつ病に関連した話し方について調査した先行研究をレビューしています。
この論文を読んでみると、うつ病に関連した話し方の研究は1920年代から始まり、ここ最近ではテキストマイニングなどの言語研究に必要なソフトウェアが開発されたことで、盛んに研究が行われるようになったみたいです。
このような研究ができるようになったのも、技術の進歩のおかげということですね。
結論
ではさっそく、どのようなことがわかったのかみていきましょう。
ここでは、「発語」と「発声」という2つの性質に着目しています。
発語
・一人称が多く、二人称や三人称が少ない
・ポジティブな感情を表す言葉が少なく、ネガティブ感情を表す言葉が多い
・死に関連した言葉が多い
発声
・音の高さの変動が少ない
・発声の中断時間が長い
・話すスピードが遅い
・抑揚が小さい
解釈
どうやら、うつ病では一人称の発言が多くなるようです。
巷でもたまに自分のことばかり延々と話し続ける人に遭遇しますが、そういった人は注意したほうが良さそうですね。
こういった話し方は、もともと物の考え方が狭いことを反映しているのか、調子を崩して周りのことを考える余裕がなくなっているのかといった因果関係は今のところはっきりしていないようです。
今後の研究でどうなるのかは気になるところであります。
また、発声に関しても、いくつか特徴的なものがみつかりました。
特に、発声の中断時間には意識していきたいところ。
普段の会話では発声の性質には注意が向きやすいですが、重度のうつ病でない限り、発声の間は意識していないとなかなか気づきにくいと思います。
発声の中断時間は、フリートークのような言葉選びで頭を使うようなときに長くなることがこの論文で指摘されています。
そのため、オープンクエスチョンで問いかけたときの返答がどうなるのかに着目していくとわかりやすいでしょう。
よろしければ、ご参考にしてください。