2019年5月25日土曜日

都市で精神病が多い原因が意外すぎた件


都市で精神病が多いのは昔から指摘されていましたが(Faris & Dunham, 1939)、その原因は何なのでしょうか。



文献


このことについて調べるために、JAMA Psychiatryに掲載されていた論文を読んでみました。

Newbury, J. B., Arseneault, L., Beevers, S., Kitwiroon, N., Roberts, S., Pariante, C. M., ... & Fisher, H. L. (2019). Association of Air Pollution Exposure With Psychotic Experiences During Adolescence. JAMA psychiatry.


こちらは2019年のロンドン大学の論文で、対象者2,063名を生まれてから18歳まで追跡し、12-18歳の思春期における精神病の原因について調査しています。


2,000人以上を18年間も追跡するとは、なかなか気合の入った研究ですねぇ。



結論


さっそくこの研究で何がわかったかを言ってしまうと、


・思春期の精神病には、大気汚染が大きく関連している


ということです。



「えっ、マジか!?」と思われたかもしれませんが、具体的には以下のようなことがわかりました。


・窒素酸化物の濃度がトップ25%のエリアで暮らしていると、精神病を経験するオッズ比は1.72(95%CI 1.30 to 2.29)

・PM2.5の濃度がトップ25%のエリアで暮らしていると、精神病を経験するオッズ比は1.45(95%CI 1.11 to 1.90)

・都市居住と精神病経験の関連性は、窒素酸化物で約60%説明される



まさか大気中の窒素酸化物がそんなに精神病に影響を与えていたとは驚きですね。



解釈


このような結果がみられた要因としては、論文著者によると、以下のようなことが考えられるそうです。


・酸化ストレス(前頭皮質や嗅球で炎症や変性が起こる)

・ビタミンDの低下(ビタミンDが低下すると精神病のリスクが増えることが知られている)

・騒音(窒素酸化物は主に自動車から排出されるため)



確かに、どれも影響していておかしくはないかなぁと思います。


物理的な環境要因も侮れないですねぇ。



医療業界は転職が多いため、必然的に引っ越しも多くなります。


住まい選びの際には、大気汚染と騒音の2つもしっかり考慮しておきたいところです。



参考文献:
Faris, R. E. L., & Dunham, H. W. (1939). Mental disorders in urban areas: an ecological study of schizophrenia and other psychoses.