2019年5月4日土曜日

ストレスはどうしてお肌の大敵になるのか調べてみた


「ストレスはお肌の大敵」などと言われ、ストレスが増えると肌のトラブルも増えたと実感する方々も多いのではないでしょうか。




実際に、今までの研究でもストレスと肌のトラブルの関連は指摘されており、ストレスが増えると、ニキビ、シミ、シワが増えたり、蕁麻疹、かゆみ、アトピー、乾癬などの皮膚疾患が悪化したりすることが報告されています(Misery et al., 2015Kimyai-Asadi & Usman, 2001)。



ただ、そうは言っても、どうしてストレスが増えると肌のトラブルが増えるのかは気になるところ。


新元号が「令和」となって、その意味や由来が気になるように、「ストレスが増えると肌トラブルが増える」と言われて、「はい、そうですか。」と黙っていられるほど野暮な人間ではありません。


そこで、ストレスが肌に影響を及ぼすメカニズムについて調べてみました。



参考になったのは、2013年のコロラド大学の論文です(Dunn & Koo, 2013)。


こちらの論文では、今までの先行研究をもとに、ストレスが肌に影響を及ぼすメカニズムについてレビューを行っています。



まず初めに、そのメカニズムの大枠を示します。


医療関係でない方々には意味不明だと思いますが、後ほど詳しく説明します。


①何らかの心理的ストレスが加わる

②交感神経系、レニン・アンギオテンシン系(RAS)、視床下部・下垂体・副腎皮質(HPA)軸が刺激される

③カテコラミン、アンギオテンシンⅡ、コルチゾールが増加

④炎症、活性酸素の増加、DNAの損傷が起きる

⑤肌のトラブルが増加する



この説明でわかった方、流石です。


もうこれ以上先は読まなくてもよいでしょう。


何ならその余りある能力を発揮して、私の代わりにこの後の文章を書いてもらいたいくらいです。



それ以外の方々は、②~④の部分が難しいかと思いますので、順番にみていきましょう。


②交感神経系、レニン・アンギオテンシン系(RAS)、視床下部・下垂体・副腎皮質(HPA)軸が刺激される


何らかのストレスがかかったときは、当然それに対処しなければなりません。


狩猟採集民だった私たちの祖先の暮らしを考えると、肉食動物に襲われるというストレスイベントが発生したとき、それに対処できなければ命を落としていたわけです。


そのため、ストレスがかかると、私たちの体内では、全身に血液を送って、体が活発に動けるように準備します。


そして、その役割を担っているのが、交感神経系、RAS、HPA軸です。


よくプレゼンの前に緊張すると、動悸がしたり、冷や汗をかいたりするのも、ストレスに対処するため、交換神経系、RAS、HPA軸が働いているからなのです。



③カテコラミン、アンギオテンシンⅡ、コルチゾールが増加


交感神経系、RAS、HPA軸の働きには、それぞれ中心的な役割を果たす物質が存在します。


サッカー日本代表でいうところの中島・南野・堂安みたいな感じです。


・交感神経系ではカテコラミンであり、心臓の働きや意欲を高めたりします

・RASではアンギオテンシンⅡであり、血管を収縮させて血圧を上げます

・HPA軸ではコルチゾールであり、血圧や血糖を高める


ストレスを受けると、それぞれの中心的な物質が増加して、体が臨戦態勢になるというわけです。


急性ストレスであれば体に大きな問題はないのですが、慢性的にストレスが続くと、様々な支障が出てきます。



④炎症、活性酸素の増加、DNAの損傷が起きる


ここが少し難しいところです。


箱根駅伝でいうところの山登りです。


しかし、ゴールは目の前、あと一歩です。



さきほどのカテコラミン、アンギオテンシンⅡ、コルチゾールの働きについて順番にみていきましょう。


カテコラミンという鍵が作用するためには、受容体という鍵穴にくっつく必要があります。


その受容体の1つにβ2受容体というものが存在するのですが、この受容体を介してDNAを収容するヒストンというたんぱく質が傷害され、結果的にDNAにダメージを与えるのです。


さらに、このDNAのダメージは、免疫を担う視床でも発生し、皮膚の病気にもかかりやすくなります。


いわゆるダブルパンチをくらうというわけです。



次に、アンギオテンシンⅡです。


アンギオテンシンⅡは、血管を収縮させるほかに、炎症細胞を調節する働きがあります。


特に、AGTR1という受容体などを介して、白血球マクロファージといった免疫関係の細胞を刺激することで、炎症を引き起こします。


さらに、アンギオテンシンⅡは活性酸素を増やしたり、抗酸化物質の合成を阻害したりする働きもあり、これによって細胞は酸化ストレスを受けやすくなります。


簡単に言うと、老けるということです。



最後に、コルチゾールです。


コルチゾールは、別名「抗ストレスホルモン」と呼ばれるくらい有名な物質ですが、免疫を抑制したり、組織を萎縮させたりすることで老化を加速させます。


コルチゾールが増えると、皮膚を構成するために必要なヒアルロン酸コラーゲンなどの生成が阻害されるため、皮膚が萎縮してしまうのです。



というわけで、まとめますと、


・カテコラミンは、DNAにダメージを与え、視床を介して免疫も抑制する

・アンギオテンシンⅡは、炎症を引き起こし、細胞に酸化ストレスを加える

・コルチゾールは、免疫を抑制し、組織も萎縮させる


となります。


これだけの物質が関わっていると、肌の状態はだいぶストレス状況を反映していそうですね。


メンタル不調の早期発見にも役立てていきたいです。



参考文献:
Dunn, J. H., & Koo, J. (2013). Psychological stress and skin aging: a review of possible mechanisms and potential therapies. Dermatology online journal19(6).
Kimyai-Asadi, A., & Usman, A. (2001). The role of psychological stress in skin disease. Journal of cutaneous medicine and surgery5(2), 140-145.
Misery, L., Wolkenstein, P., Amici, J. M., Maghia, R., Brenaut, E., Cazeau, C., ... & Taïeb, C. (2015). Consequences of acne on stress, fatigue, sleep disorders and sexual activity: a population-based study. Acta dermato-venereologica95(4), 485-488.