2019年5月18日土曜日

同僚にハードワーカーが多いと、仕事と家庭の両立が難しくなるというパデュー大学の研究


以前に「同僚の長期休職によって仕事のストレスが増える」という記事を書き、職場の同僚とメンタルヘルスの関連に触れましたが、職場の同僚はワークライフバランスにも影響を与えるのでしょうか。




文献


このことについて調べるために、Journal of Organizational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。

Vaziri, HBenson, GSSalazar Campo, MHardworking coworkers: A multilevel cross‐national look at group work hours and work–family conflictJ Organ Behav20191– 17https://doi.org/10.1002/job.2361


こちらは2019年のパデュー大学の論文で、20カ国7,600名の労働者を対象として、職場の平均労働時間、仕事と家庭の両立、各国の集団主義の関係について調査しています。


もう少し具体的に言うと、この研究では、職場の平均労働時間は、個人の労働時間と関係なく、仕事と家庭の両立に影響を与え、その度合いは各国の集団主義の文化で変わってくるのではないかという仮説を立てたわけです。



同僚や文化的背景の影響を考慮した研究となっていて、着眼点が興味深いですよねぇ。



ちなみに、各国の集団主義は先行研究をもとに0~1で評価され(Hofstede, 1984)、高い国・低い国はそれぞれ以下のようになっています。


集団主義の高い国々

・韓国 0.82

・中国 0.80

・エジプト 0.75


集団主義の低い国々

・アメリカ 0.09

・イギリス 0.11

・オランダ 0.20


エジプトの集団主義が高かったのは意外でしたが、それ以外は想像しやすいのではないでしょうか。


韓国に旅行に行ったときは、家族で服を揃えて外出している方も結構いましたからねぇ。


ちなみに、日本はというと、0.54でした。


もっと高いのかと思っていましたが、世界的にみると、意外とそうでもないようです。



結論


では、この研究で解析を行って何がわかったかというと、


・職場の平均労働時間は、個人の労働時間と関係なく、仕事と家庭の両立に悪影響を与える

・その悪影響の度合いは、集団主義の高い国々でより強くなる


となりました。



つまり、研究仮説が立証されたということになります。



解釈


この結果を解釈すると、同僚に長時間労働をするようなハードワーカーが多いと、仕事と家庭の両立が難しくなるということになります。


なかなか興味深い結果ですが、論文著者は「ハードワーカーへの共感」が影響していると指摘しています。


つまり、「同僚があんなに働いているのだから、自分ももっと働かなくては!」と思うことで、仕事と家庭の両立が難しくなってしまうのです。



集団主義が高い国々でより仕事と家庭の両立が難しくなったことを考えると、一理ありそう。


確かに、同僚や上司がまだ仕事しているときに帰るのは、何となく後ろめたい感じがありますからねぇ。


そう考えると、長時間労働対策も個人の労働時間だけでなく、職場単位でどうなっているのかといった情報は重要になりそうです。


個人の労働時間は長くなくても、職場が忙しいところだとストレスを感じやすくなっているかもしれません。



参考文献:
Hofstede, G. (1984). Culture's consequences: International differences in work-related values (Vol. 5). sage.