以前に「職場で責められたときはユーモアが役立つ」という記事を書いたこともあり、職場でのユーモアはなんとなく仕事にも良い影響がありそうですが、実際にはどのような効果が科学的に証明されているのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Journal of Managerial Psychologyに掲載されていた論文を読んでみました。
Mesmer-Magnus, J., Glew, D. J., & Viswesvaran, C. (2012). A meta-analysis of positive humor in the workplace. Journal of Managerial Psychology, 27(2), 155-190.
こちらは2012年のノースカロライナ大学の論文で、職場のユーモアの効果に関する49の調査(対象者 8,532名)をメタ分析しています。
メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて、定量的に評価する手法のことで、複数の研究をまとめた結果が出るため、信頼性が高くなります。
メタ分析では「効果量」という標準化した数値を用いて効果の大きさを評価します。
今回の研究で用いられた相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。
方法
この研究では、職場のユーモアの効果を
①労働者個人に対するもの
②上司から部下に対するもの
③ストレス緩和作用
の3つに分類して解析が行われました。
単に労働者という立場だけでなく、マネジメントやストレス緩和作用も調べてくれているというところは有難いですね。
結果
では、どのようなことがわかったのかみていきましょう!
なんと、すべての調査項目で統計的に有意な結果が示されています。
①労働者個人に対するもの
・バーンアウト -0.23
・ストレス -0.25
・ストレス対処効率 0.29
・健康 0.21
・仕事のパフォーマンス 0.36
・職場の一体感 0.20
・仕事の満足度 0.11
・退職 -0.16
②上司から部下に対するもの
・部下の仕事のパフォーマンス 0.21
・職場の一体感 0.42
・部下の仕事の満足度 0.39
・部下の退職 -0.31
・部下の上司への満足度 0.16
・上司のパフォーマンスに対する部下の評価 0.45
③ストレス緩和作用
・職場のユーモアは、仕事のストレスがバーンアウトに与える影響を有意に緩和した
どれも職場にとって望ましい結果となっており、ユーモアの力はハンパないですね。
解釈
以上の結果をまとめると、職場のユーモアには以下の3つのメリットがあります。
①労働者のメンタルや作業効率の改善
②上司のリーダーシップの改善
③ストレス緩和作用
特に、効果量をみると、労働者個人への効果よりも、上司のリーダーシップへの効果が大きくなっています。
つまり、上司のユーモアのレベルは、職場環境の改善により大きな効果を持っているということです。
今まであまり意識してきませんでしたが、上司のユーモアって大事なんですねぇ。
今回の研究ではユーモアが高いと部下から評価も高くなりますし、先行研究では下ネタや差別的な冗談でなければ、スベっても地位は下がらないということも報告されているので(Bitterly et al., 2016)、機を見計らってチャレンジしていきたいところです。
参考文献:
Bitterly, T. B., Brooks, A. W., & Schweitzer, M. E. (2017). Risky business: When humor increases and decreases status. Journal of personality and social psychology, 112(3), 431.
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.