2019年3月13日水曜日

とても楽しい体験をしているときは写真を撮らないほうがいいというデンバー大学の研究


観光地などに行ったときは、現地での体験と写真を撮ることのバランスがいつも気になるのですが、この問題にはどのように対処したらよいのでしょうか。



文献


このことについて調べるために、Psychology & Marketingに掲載されていた論文を読んでみました。

Nardini, G., Lutz, R. J., & LeBoeuf, R. A. How and when taking pictures undermines the enjoyment of experiences. Psychology & Marketing.


こちらは2019年のデンバー大学の論文で、194名の学生を対象として、写真を撮ることが楽しい体験にどのような影響を与えるのか調べています。



方法


具体的にどのようなことを行ったかというと、参加者を次の4つのグループに分けて、どの程度の楽しさを得られたのかアンケート調査を行っています。


①レビューの高いドキュメンタリー動画をただ見てもらう

②レビューの高いドキュメンタリー動画を見てもらいながら、記録に残したいところをスクリーンショットしてもらう

③レビューがそこそこのユニバーサル・スタジオの説明動画をただ見てもらう

④レビューがそこそこのユニバーサル・スタジオの説明動画を見てもらいながら、記録に残したいところをスクリーンショットしてもらう



つまり、動画の楽しさレベルと画像記録の有無で4つに分けたというわけです。


ちなみに、スクリーンショットは手間がかからないように、ワンクリックでできるようにし、動画の時間はどちらも10分間で統一したようです。



結果

では、どのような結果になったかというと、

・レビューの高い動画に関しては、ただ見てもらったグループのほうが、画像を記録してもらったグループよりも、楽しさが有意に高かった(79.43点 vs 69.40点)

・レビューがそこそこの動画に関しては、ただ見てもらったグループと画像を記録してもらったグループで有意な差はみられなかった(22.60点 vs 27.84点)

・どちらの動画でも、画像の記録枚数と楽しさには有意な相関はみられなかった

となりました。



解釈


今回の研究結果をみると、そこそこ楽しい活動しているときは、写真を撮っても楽しさは変わらないけれど、とても楽しい活動しているときは、写真を撮ると楽しさが減ってしまうということになります。


しかも、写真の枚数とは関係なく、写真を撮るという行為自体で楽しさに違いが出てきてしまうようです。



この結果は、非常に参考になりますね。


とても楽しい体験をしているときは、その体験を楽しむことに全力で集中したほうがよいということです。


確かに、写真を撮ることが頭のなかにあると、その場の経験に思う存分楽しむのは難しくなりますからね。


まさにマインドフルネスを実践する場といえるでしょう。




どうしても、そのようなとても楽しい体験を写真に残したいときは、周りの人と記録を分担したり、カメラマンを雇ったりしたほうがよさそうですね。


私も、海外のバチャータ・ダンサーがデモンストレーションしてくれるときは、動画を撮るのは控えようかな。