知的労働者の1日の仕事の中断回数は85回といわれていますが(Wajcman & Rose, 2011)、仕事の中断は健康面にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Work & Stressに掲載されていた論文を読んでみました。
Keller, A. C., Meier, L. L., Elfering, A., & Semmer, N. K. Please Wait Until I Am Done! Longitudinal Effects of Work Interruptions on Employee Well-Being.
こちらは2019年のフローニンゲン大学の研究で、仕事の中断が仕事の満足度と心身の不調に与える中長期的影響を調べるために、415名と663名の労働者を対象として2つのアンケート調査を行っています。
それぞれのアンケートは、
①5年間で4回
②8か月で5回
の頻度で調査が行われました。
つまり、①で仕事の中断の長期的影響、②で中期的影響を調べたということになります。
結果
では、どのような結果になったというと、
・仕事の中断の平均回数の多さは、中期的には仕事の満足度と心身の不調に悪影響はなかったが、長期的には有意に悪影響があった
・ただし、調査期間中に仕事の中断回数が増えていった場合、中期的にも長期的にも、仕事の満足度と心身の不調に悪影響を与えた
となりました。
解釈
作業に集中しているときに声をかけられるとイラっとしますが、どうやら、それは長期的にみても、健康面に悪影響を及ぼしているということになります。
仕事の中断が多いと、仕事のコントロール感が減ってしまい、ストレスにつながりやすいようです。
今まであまり意識してこなかった分、インパクトが大きいですね。
そう考えると、仕事中に「今、お時間よろしいでしょうか」と話しかけられることはよくありますが、あれは健康にはよろしくなかったのかぁ。
自分も時々使うフレーズだけに、今後は緊急でなければ、なるべく作業が完了したタイミングを見計らって声をかけていきたいです。
また、今回の調査では、仕事の中断の平均回数よりも増加傾向であるかどうかということがより早期に健康に影響を与えています。
職場の異動などで環境が変わって、仕事の中断が増えたときなどは注意したほうがよさそうですね。
論文著者によると、仕事の中断への対策としては、「集中できる時間と場所の確保」が重要であると指摘しています。
つまり、職場内で、あらかじめ時間帯を決めて、その時間は他のことをせずに1つの作業を行うように設定したり、話し合う場所と集中する場所を分けたりしておくということです。
仕事の中断は見過ごされがちですが、もっとも頻度の多いストレスともいわれており(Baethge et al., 2015)、しっかりとした対策がとれるとよいですね。
参考文献:
Baethge, A., Rigotti, T., & Roe, R. A. (2015). Just more of the same, or different? An integrative theoretical framework for the study of cumulative interruptions at work. European Journal of Work and Organizational Psychology, 24(2), 308-323.
Wajcman, J., & Rose, E. (2011). Constant connectivity: Rethinking interruptions at work. Organization Studies, 32(7), 941-961.