2019年3月20日水曜日

ほろ酔い状態だと創造力が高まるというイリノイ大学の研究


今までの経験上、お酒を飲むと新しいアイディアが浮かびやすい傾向があるのですが、果たしてアルコールに創造力を高める効果はあるのでしょうか。




文献


このことについて調べるために、Consciousness and Cognitionに掲載されていた論文を読んでみました。

Jarosz, A. F., Colflesh, G. J., & Wiley, J. (2012). Uncorking the muse: Alcohol intoxication facilitates creative problem solving. Consciousness and Cognition21(1), 487-493.


こちらは2012年のイリノイ大学の論文で、21~30歳の男性40名を対象として、アルコール摂取と創造力の関係について調べています。



方法


どのように調べたかというと、被験者を20名ずつ以下の2つのグループに分けました。


①ウォッカとクランベリージュースのカクテルを飲んで、創造力を必要とする課題に答えてもらう

②シラフの状態で、創造力を必要と課題に答えてもらう


アルコールの摂取量は、血中アルコール濃度がほろ酔い状態の0.07%になるように、体重1kgあたり0.88gのアルコールを飲んでもらいました。


実際に測定した平均血中濃度は、0.075%だったので、うまく調整できたようです。



また、創造力を必要とする課題としては、Remote Associates Test(RAT)というものを受けてもらいました。


RATでは、3つの単語を提示して、それらに共通する1語を追加して、意味のある言葉を作ってもらいます。


例えば、「青、虚、真」という3つの単語が提示されたときに、「空」という単語を追加して、「青空、空虚、真空」という意味のある言葉を作るという感じです。



ちなみに、お酒を飲むグループと飲まないグループのもともとの能力差が出ないようにするため、短時間の記憶力(ワーキングメモリ)も測定し、お酒を飲まないグループの被験者はお酒を飲むグループとスコアが同じになるように調整されています。



結果


では、どのような結果になったかみていきましょう!


・お酒を飲んだグループでは、RATの正答率が有意に高かった(58% vs 42%)

・回答までの時間も有意に早い(11.54秒 vs 15.24秒)



つまり、お酒を飲んだグループのほうが、創造力を必要とする課題に早く正確に答えたということになります。



解釈


どうしてこのような結果になったかというと、「お酒を飲むと注意力が低下する」ことと関連しています。


「注意力が低下すると課題に取り組めなくなるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、新しいアイディアを生み出すためには、様々な分野の情報を組み合わせていく必要があるため、1つのことに集中していると創造力を発揮できないのです。



したがって、お酒を飲んで程よく酔っぱらった状態では、注意力が分散して様々な分野の物事に向かうため、創造力を必要とする課題に対処しやすくなるというわけです。


私がこの論文を探したきっかけも、お酒を飲んだ時に記事のタイトルを思いつきやすいなと思ったことであり、日常の疑問に科学的な答えが見つかったのはよかったです。



ただし、お酒の飲み過ぎは当然健康に良くないので、適量を守ることは重要です。


最近の研究データでは、アルコール摂取量が週100g以上になると、脳卒中や心臓病のリスクが有意に増えることが指摘されています(Wood et al., 2018)。


くれぐれも飲み過ぎにご注意ください。



参考文献:
Wood, A. M., Kaptoge, S., Butterworth, A. S., Willeit, P., Warnakula, S., Bolton, T., ... & Bell, S. (2018). Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies. The Lancet391(10129), 1513-1523.